北崎 なるほど。ただ日本国内の数年前までの状況で言えば、各社人事部は比較的有名な巨大ベンダーを活用する傾向がまだまだ強かったような気がするのですが、そうした中で、スタートアップの企業が選ばれ始めていっている理由はどのようなところにあるのでしょうか?

寺澤 一つはユーザビリティの違いです。採用市場を例にすると、以前は人事給与関連のシステムを取り扱う企業や就職情報会社等、一部の企業が採用担当者の効率性を意識して準備した採用管理システムが多かったようです。一方、スタートアップの企業は、たとえばSNS的なアプローチで、採用担当者だけではなく一般社員がシステムを使用することを想定し、シンプルで使いやすいインターフェースを追及していたりします。そういった視点の違いが人事側にとって使いやすいという印象を与えています。

北崎 欧米のテクノロジー進化の流れを汲んで、効率性を追求していく視点から、人事のみならず社員や採用候補者に至るまでのシステムを活用する人への「Employee Experience(経験の質)」を高めていく視点に切り替わっているということですね。ある意味、多数のベンダーが参加し、競争環境におかれたことで、こうした差別化要素に対する注目が集まり、結果としてサービスの質が高まっているのかもしれませんね。

今のピープルアナリティクスは
まだ「序章」の段階

北崎 最後に、ピープルアナリティクスにとって、16年は大きな変化を迎えた1年だったかと思いますが、今後はどのような動きがでてくると考えていますか。

寺澤 現在の状況は、企業にとってあくまでとっかかりに過ぎず、「序章」の段階にあると感じています。また、本当の拡大期はこれから来るのであろうと考えています。今後、多くのビジネスがインターネットやテクノロジー進化の影響を免れられない中で、人事だけが影響を受けないわけはなく、むしろ遅れているという印象です。そのため、ピープルアナリティクスにおいては、これから「やるべきこと」「やれること」「進化すること」「変わること」がたくさん出てくると思っています。またそれによって人事のありようもさらに変化していきます。

 これまでの人事業務のあり方に関する固定観念を取り払い、人を取り扱うというヒューマンの部分は大切にしながらも、それをよりよく活用するためにアナリティクスやテクノロジーを活用していく時代になっていくと思います。私の会社は、企業とベンダーの中間的立場にいるからこそ、そういった流れをより強く感じています。

北崎 人事のあり方はもちろん、労働環境の変化から一人ひとりの働き方も大きく変わっていくことを考えると、ピープルアナリティクスの拡がりは今後益々加速していきそうですね。本日はありがとうございました。

インタビュアー:PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 北崎 茂
共同執筆:PwCコンサルティング合同会社 シニアアソシエイト 岸井 隆一郎