反省会においては「直観」を重視する

 第1のポイントは、商談や会議の最中の顧客や出席者の表情、仕草、動作などを、全員が注意深く見ているということ。このA課長は、商談の前に、B君、C君、D君に、「お客様の表情の変化や気になる仕草を、注意深く見ておくように」と指示していた。だから、こうしてスムーズに反省会が進んでいる。

 しかし、まだ経験の浅い若手メンバーの場合には、どれほど、「商談中、顧客の表情や仕草に注意するように」と指導されても、そもそも「自分の資料を説明するのに精一杯」という時代がある。それでも、こうした課題意識を持たせ、「直後の反省会」を積み重ねていくと、自然に、資料説明をしながらでも、顧客の表情や仕草に注意を払えるようになっていく。

 ただ、ここで「お客様の表情や仕草を注意深く見ておく」という表現を使ったが、この「注意深く見ておく」ということは、「相手をじろじろと観察する」という意味ではない。それは、顧客に対しては無礼な行為であり、相手を不愉快にする行為であることも、知っておく必要がある。最悪の場合には、相手に警戒心を抱かせてしまうことさえある。

 ここで言う「注意深く見ておく」という意味は、「自然かつ和やかな表情でありながら、相手の表情や仕草に、細やかに心を向けておく」といった意味である。ただし、これが本当に、自然にできるようになるには、やはり、それなりの修練が必要である。

 第2のポイントは、A課長が、B君、C君、D君、全員を順番に指名して、「感じたこと」「気になったこと」を語らせていること。全員が、それぞれの視点で、直前の商談を振り返り、「言葉以外のメッセージ」を感じ取り、想像し、それを共有している。

 ここで大切なことは、「全員」が意見を述べるということである。これは、すでに述べたように、複数のメンバーの「複数の視点」による振り返りを通じて、重要な場面での表情や仕草の「見落し」を最小化するという意味もあるが、同時に、若手メンバーに対する「教育的配慮」という意味もある。

 もとより、「深層対話力」という意味では、若手メンバー3名よりも優れた力を身につけているA課長ではあるが、それでも、こうした若手3名の「感じたこと」「気になったこと」は、それなりに参考になる。仮に、B君の感じた「E課長は、予算やコストの説明のところは、少し聞き流している印象だった」ということが、自分の感じた印象と違っていたとしても、その印象の「突き合せ」によって、自身の印象を検証することができる。

 第3のポイントは、この反省会においては、まず、自分が「何を考えたか」よりも、自分が「何を感じたか」「何が気になったか」を出し合うということ。メンバー全員が「直観的」に感じたことを共有することが大切である。なぜなら、「言葉以外のメッセージ」を感じ取るという行為は、基本的に、「論理的に考える行為」ではなく、「直観的に感じる行為」だからである。

 もちろん、まだビジネスパーソンとしての修業を始めたばかりの若手3名である。その直観が正しいとは限らないが、大切なことは、若い時代から、商談や会議において、自分が「何を感じたか」「何が気になったか」を大切にし、それを、こうした形で、明確に語るという修練をすることである。プロフェッショナルの直観力というものは、まさに、こうした修練を通じて、身についていく。