拙著、『知性を磨く』(光文社新書)では、21世紀には、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という7つのレベルの知性を垂直統合した人材が、「21世紀の変革リーダー」として活躍することを述べた。
この第18回の講義では、前回に引き続き「技術」に焦点を当て、拙著『仕事の技法』(講談社現代新書)において述べたテーマを取り上げよう。(田坂塾・塾長、多摩大学大学院教授 田坂広志)
本を読んだだけでは掴めない「プロの技法」
今回のテーマは、「なぜ、『頭の良い人』ほど、プロの技術を掴めないのか?」。このテーマについて語ろう。
ここまで3回の連載では、「仕事の技法」の根幹にある「深層対話の技法」や「深層対話力」の大切さとその実践方法について述べてきた。
しかし、この連載を読まれて、「深層対話の技法」や「深層対話力」に興味を持ち、この連載の続きを読まれる方がいるならば、その読者に理解しておいていただきたいことがある。
それは、この連載の「読み方」である。
なぜなら、もし読者が、この連載の「読み方」を間違えるならば、どれほどこの連載を読まれても、この「深層対話の技法」を掴むことはできないからである。
そこで、今回は、その「落し穴」について語ろう。そして、深層対話の技法を身につけるための、この連載の「実践的な読み方」について語ろう。
いま、読者が、本連載の読み方を間違えるならば、どれほどこの連載を読まれても、「深層対話の技法」を掴むことはできないと述べた。
これは、どういう意味か?
それを説明するためには、まず、読者に、次の「二つの言葉」の違いを理解していただきたい。
「知識」と「智恵」。
では、この「二つの言葉」の違いとは何か?
まず、「知識」とは、言葉で表せるものであり、書物で学ぶことができるものである。これに対して、「智恵」とは、言葉で表せないものであり、経験を通じてしか掴めないものである。
では、なぜ、この「二つの言葉」を区別しなければならないのか? 一つの場面を紹介しよう。