※手術ロボット「ダ・ヴィンチ」【上】 はこちら

 もともと戦地で負傷した兵士を遠隔操作で治療する技術として開発されたロボット手術だが、医療用機器として認可された後もそれへの期待は高かった。2001年、実際に光ファイバーの海底ケーブルを通し米国‐フランス間で行われた大陸間横断の胆嚢手術では、当時「ダ・ヴィンチ」と優劣を競っていた「ゼウス」という手術ロボットで世界初のミッションを完遂している。大西洋単独無着陸横断飛行を成功させたC・リンドバーグにちなみ“リンドバーグ手術”と呼ばれる大陸間横断術はしかし、通信の安全性確保が難しいことから、臨床応用には至っていない。

 ただダ・ヴィンチの製造元ではすでに、通信衛星による遠隔操作を視野に入れたシステムが完成しているという。将来は大陸間横断どころか地球の反対側の国や地域を結び、遠隔手術が行われるかもしれない。このほか、救急災害時の手術や複数の場所に散らばる専門医によるチーム医療などへの応用に大きな期待が寄せられている。