東芝は世界各国への原発インフラ輸出の先行きが不透明になり、次なる柱としてスマートコミュニティ事業に注力する
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「パナソニックやトヨタ自動車が興味を示しており、日本の製造業復活のきっかけとしたい」

 経済産業省幹部は期待を込めて語る。

 両社が興味を示しているのは、東芝が5月に買収することを決めたスイスのランディス・ギア社と、この案件に追加出資を決めている産業革新機構の動きだ。現在、機構は追加出資比率など最終的な調整をしているが、50%弱で検討している模様だ。

 機構は投資ファンドとしての性格があるためエグジット(出口)戦略、すなわち資金回収の青写真が重要だ。そして、機構の持ち分の一部を引き受けるエグジット先として浮上しているのが、パナソニックとトヨタだというのだ。

 ランディスはスマートメーター製造とシステム構築で豊富な実績を持つ。太陽光や風力発電、蓄電池などを街に配置し、環境負荷の低い省エネルギー都市「スマートコミュニティ」が世界的に注目されているが、スマートメーターはその都市に住む各世帯に必ず設置される。電力やガス、水道などの利用状況のデータを収集し制御する機械で、スマートコミュニティの肝である。

 そのスマートメーターの世界シェア36%(2009年、米データモニター社)で世界首位を走るランディスを東芝が手中にしたことで、経産省が描いていた、世界中のスマートコミュニティ構築事業を日本企業連合で受注し、それを日本の製造業復活のきっかけとするという構想が具体化へ大きく前進したのだ。

 パナソニックは、機構のエグジット先として検討していることについて「そのような事実はまったくない」としているが、関係者は「パナソニック側からこの件に関して興味を示して経産省を訪れ、情報収集をしている」と話す。

 スマートコミュニティ事業では、太陽光発電システムや家庭用蓄電池、電気自動車などが都市計画の中で重要な要素として登場する。パナソニックは省エネ家電のほか、グループ会社の三洋電機で太陽電池や蓄電池の拡販を今後の成長のカギとしている。トヨタにおいてはプラグインハイブリッド車だ。両社とも経産省の構想とも合致する東芝・ランディス連合にかかわるメリットは大いに見込めそうなのだ。

 さらに、現在、NIST(米国国立標準技術研究所)などを中心にスマートコミュニティを構成する技術の国際標準化の議論が進められており、ランディスは主要メーカーとして、その議論の中心にいる。国際標準化の波に乗り遅れないためにも、他の日本企業は東芝・ランディス連合との距離を縮めておきたいところなのである。

 そしてなにより、原発インフラ輸出の先行きが震災で見えなくなった今、経産省にとって東芝・ランディス連合は製造業復活の光明でもある。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)

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