USBメモリのような小さなスティック。じつはこれ、世界で初めて、米アップルの高機能携帯電話iPhoneへの接続を可能にした血糖測定器「iBGStar」である。仏製薬大手のサノフィ・アベンティスが米医療機器メーカーのアガマトリックスと開発したものだ。世界に先駆けて2011年4月、フランスとドイツで発売。日本では12年に厚生労働省へ販売承認を得るために申請を行う予定で、13年頃には国内発売が期待できそうだ。

iPhoneの下部に装着されているのが血糖測定器「iBGStar」

 使い方は簡単だ。患者は指先に針を刺して、出てくる血液を測定器に差し込んだストリップ(細長いチップ)につける。すると6秒で血糖値が測定され、結果がiPhoneのタッチスクリーンにフルカラーで表示される。

 日本の糖尿病患者は約890万人に上り、多くの患者の共通した悩みは面倒な血糖値の自己管理だ。血糖をうまく管理できなければ、合併症の発症リスクが上昇してしまう。このため国内では、糖尿病患者のうち100万人以上が血糖測定器を使って血糖管理を行っており、簡単かつ低価格な血糖測定器へのニーズは高い。

 iBGStarで測定したデータは主治医に送信できるため、フランスやドイツでは、患者からデータを受け取った医師が必要に応じてアドバイスを返信するなど、携帯電話を活用した管理指導が展開されている。

 フランスでのスターターキット(付属製品込み)の価格は73.22ユーロ(約8500円)。ドラッグストアで売られており、保険も適用されている。ドイツでは59.90ユーロ(約6900円)でオンライン販売されている。測定した血糖値を管理するアプリケーションソフトウェアは無料で提供される。

 じつは日本でも、携帯電話と血糖測定器を接続して、血糖管理を行うサービスは始まっている。

 富士通は血糖測定器大手のアークレイと業務提携し、NTTドコモに供給しているシニア層向け携帯電話「らくらくホン」を血糖測定器と接続させる糖尿病患者支援サービスを今夏から開始した。このサービスは血糖値データに加えて、携帯電話に内蔵している歩数計の数値も自動で記録し、さらには食事、体重・血圧、通院記録なども携帯電話で一括して管理できる内容となっている。

 常に持ち歩く携帯電話を活用して、簡単かつ正確に健康を管理するサービスは、ハード、ソフトともに今後大きな市場に成長する可能性を秘めている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 臼井真粧美)

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