ナルセペダルは熊本県にある有限会社「ナルセ機材」が開発した製品。アクセルとブレーキがひとつになったもので、正式名称は「ワンペダル」となる。

右足用のワンペダル(ナルセペダル)

 このペダルの特徴はアクセル操作にある。右足をペダルに乗せた状態で、踏めばブレーキがかかり、ペダル上の足元を右にずらすと発進する。

 ただし、ずらすといっても足首を右に曲げるのではなく、ペダルに足を乗せた状態のまま右ひざを外側に開く。すると、足首も勝手に右方向に向くはずなので、走行中はその状態をキープする恰好だ。アクセルは膝を開き、ブレーキは踏み込む。実際にその動作をしてみれば分かるが、足への負担も少なく無理のない姿勢なので、長時間の運転も可能だろう。

「ナルセペダルでもアクセルとブレーキの操作を間違えてしまう場合がありますが、仮に間違えたとしても、ペダルの踏み替えが必要ないのでブレーキ操作を素早くできます。また、びっくりした場合、従来車のアクセルペダルを踏むという反射的動作は、ナルセペダルではブレーキ操作となるので、事故に遭う前に停止できるというメリットがあります」(松永氏)

安全性に優れたナルセペダルが
普及しない理由

 ナルセペダルを手に入れる方法は簡単だ。ナルセ機材に電話で注文すれば、わざわざ熊本にある同社に自動車を持ち込まずとも、自宅から最寄りの自動車販売(整備)店にペダルを発送してもらえ、整備士が取り付けてくれる。

 値段は、最もオーソドックスなシングルタイプ(右足操作用)を販売店で取り付けた場合、基本価格は21万6000円(税・取付費込※同社持ち込み取付の場合は18万3600円)。同社のある玉名市では数年前から市民がナルセペダルを取り付ける際に助成金(1台あたり5万円)を出しており、また身体障害者手帳保有者には、自治体による最大10万円の助成金制度(各自治体により条件が異なる)もあるという。

 助成金対象製品ということは、少なくとも国や地方自治体から安全性のお墨付きを得ているといえる。たった20万円前後で命が助かるならば安いものだ。

 にもかかわらず、何故ナルセペダルは普及しないのか。

 まずその理由として、大手自動車メーカーが、冒頭で言及した踏み間違い事故の統計に、そこまで危機感を持っていないということが挙げられる。警察庁によると、16年の交通事故発生件数は全国で49万9232件だった。そのうち踏み間違い事故を6000件として計算すると、全体のわずか1.2%に過ぎない。たったそれだけの事故のために、全ての自動車の仕様を変えるのは採算が合わないというのが実情だろう。