僕らが旅に出る理由
なかでも、ブックフェア前日に同僚と話題にしていたのが「みすず書房」のブース。歴史的名作を多々世に送り出している出版社であり、私が最も衝撃を受けた作品『夜と霧』の発行元でもあります。
ご存知の方もたくさんいらっしゃると思いますが、『夜と霧』はナチスの強制収容所に収容された心理学者V.E.フランクルの壮絶な体験記。中学生の時、自宅にあった作品を読む機会があり、しばらく夢に出きてもおかしくないほどショックを受けました。
うろ覚えですが、自宅にあったものは霜山徳爾訳の旧版で、巻末に現地の写真が掲載されていたはず。その写真のすごさといったら、もう。今でも目を背けてしまいたくなるほど、悲惨な様子を写し出していました。すらすらと気軽に読める作品ではありませんが、読んで絶対に損はない本だと思います。
私は大学生になるまで海外に行ったことがなかったのですが、初めての海外として旅立った行き先がドイツ。一人旅でした。『夜と霧』の影響とまでは言いませんが、なんとなくドイツに興味を持つきっかけにはなったことは間違いありません。1冊の本をきっかけに人生が変わる人もおり、あらためて本の影響力は凄いなと思います。
実は、私がダイヤモンド社への入社を考えはじめたのも、『新版 考える技術・書く技術』を読んだことがきっかけです。大学時代、当時外資系コンサルタント会社で活躍していた先輩から贈られた1冊でした。
「すごく良い本だから」と薦められたものの、ノンフィクションや小説を好んで読んでいた私にとって、ビジネス書はあまり馴染みのないジャンルでした。「タダで貰ったものだし、とりあえず読んでみようかな」くらいの軽い気持ちで手にとってみたところ、「こりゃ、面白い!」とどんどん引き込まれてしまったことを覚えています。
正直に白状すると、本の内容はほとんど理解できていなかったと思います。なんとなく「これは面白い」と感じるくらいで。
ただ、これをきっかけにビジネス書にも関心を持ち始めたことは事実で、先日急逝されたゴールドラット博士の『ザ・ゴール』やドラッカーの『プロフェッショナルの条件』も読むようになり、縁あってダイヤモンド社で働きはじめ、そしてなぜか日記を書くことになっております(笑)。
ちなみに、ドイツ旅行の面白顛末も書くには書いたのですが、ボツになったようです。今回の日記のクライマックスを削るとは、編集担当はどんな神経をしているのでしょうか。