そのほか、太陽光発電の収入の扱いについても揉めた。電気代をセーブできる上、うまくすれば中部電力に売ることで収入が入るが、そう大きな額ではない。そのお金は両方ともおひさま進歩エネルギーの収入とし、それも市民出資の団体なので20年契約にして欲しいと行政に要望を出したところ、「長期債務負担行為」になると断られそうになった。
役人が、目先の古い秩序だけに従うと、こうした事態に陥る。多くの自治体が同様で、「マジックテープ(ベリベリっと着脱可能なマジックテープのように、個々は大した引っかかりではないのに、全部がくっつくと動かない)社会」なのである。
結局、これらの問題は、飯田市の牧野光朗市長が「そんなのいいじゃないか」とトップダウンの英断を下してくれて、乗り越えられた。役人が目先の仕事だけを忠実としようとすると動かない問題も、大局的な視点を持った上位者が「そんな馬鹿なこと言わなくても」と議会の質問にも誠意を持って答えれば改善は可能なのだ。
そういうことを一つ一つ乗り越え、いったんブレークスルーできると、後は早い。日本人は横を見るのが得意なので「飯田市では認めているらしい」と前例になり、他地域が倣う好循環もうまれる。
石油ショック時のOPECと同じく
地域にマネーを還元できる体制を目指せ
この飯田市の事業は、環境省が04年と05年に10箇所ずつ採択した「平成のまほろば事業」の一つである。冒頭に挙げた「回らない風車」のつくば市も、その一つだった。
当時、採択された事業のうち、今うまくいっているのは、飯田市と岡山県備前市の二つのみである。いずれも地域に事業の核と場をつくったことが継続できたゆえんだ。
この7月に再び、環境省が新設した再生可能エネルギー事業に対する補助金の公募が始まる。手厚い補助金を出すと、かえってカネ目当ての失敗事業が多発した過去の教訓から、今回は地域の拠点の運営費(人件費など)のみを3年間支援するスキームとなっている。事業自体は、全量買取制度などで十分まわしていけるので問題ない。地域に根ざす事業をつくり育てるために、ぜひ、幅広く応募してもらいたい。
ただし懸念は、自然エネルギー設備を導入しても、地元にその収益や雇用が還元されないケースも過去にしばしば見られたことだ。たとえば、青森県に風車が約200本あるが、そのうち青森資本は3本しかない。残りは東京・大阪の資本に依るものである。これでは売電収益は青森から出て行く、いわば「植民地型開発」だ。
ここで、70年代のオイルショック時にOPEC(石油輸出国機構)諸国がとった行動が参考になる。OPECは、油田採掘の粗利9割をせしめるセブンシスターズ(国際石油会社7社。エクソン、モービル、シェブロン、テキサコ、ガルフオイル、BP、ロイヤル・ダッチ・シェル)からの支配脱却を狙い、石油開発へ経営参加・国有化することで粗利配分を逆転させた。これから日本の地域社会は、OPECと同じことを自然エネルギーに関して実現する必要がある。
地域の資源からの便益は、地域のものに。それが地域の豊かさにつながるのである。