この事業には、環境省が事業費の3分の2という手厚い補助金を出した。残りの3分の1も公金でまかなわれ、早稲田大学が事業委託を受けコンサルティングをした。つくば市は、住民監査請求で公金返還が決まったうえ、環境省からも補助金返還を求められ、早稲田大学を提訴する騒ぎに発展した。結局、早稲田大学は9000万円の支払いを命じられたが、つくば市も事業の検証が甘く7割の過失が認められることとなった。
何が間違っていたのか?
まず、掴みガネのように補助金を出す国も、受け取る地方自治体も、双方が補助金をもらえば事業が進む、と闇雲に信じている。「政策=補助金」という構図が頭で直結してしまっているのだ。
しかも、国と地方自治体の担当者は二年ごとに替わってしまう。国と自治体の間に入るコンサルやメーカーも、競争入札で食らいついて最低限の仕事を終えたら終わり、だ。この“無責任のトライアングル構造”が、悲劇を生む。
つくば市は象徴的な事例だが、他にも同様の失敗はいくらでもある。
2002年に始まった「バイオマス(生物資源)ニッポン総合計画」も然りである。
関連技術の向上と利用促進のために2003年度~2008年度に実施された214事業について、総務省行政評価局が調査した。すると、その8割強で「効果が表れていない」として、2月に関連省庁に改善勧告が出されたのである。総事業費6兆5000億円以上、補助金にして5000~6000億円がムダに使われた、という空恐ろしい事態である。
私自身が委員を務めた総務省の「緑の分権改革推進事業」も同様だ。およそ実用からかけ離れた事業が提案される。
ある地域では「太陽光のパネルの角度を変えた実験をやってみました」と発電効率が1-2%違うだけで実験しなくても分かることを4000-5000万円かけて実施していた。また別の地域では、省水力発電の実験として小さなおもちゃのような装置をつけたが、夏に計画して冬に実験して1年以内に撤去する計画なので、水が流れる肝心の春~夏に実験できないという大根劇のような事態を招いた。
この手の“補助金事業”は、日本中で行われている。お金がムダに使われても、地域に知識や場、人材が残るのであれば、まだ実施する甲斐もある。しかし、単に税金でガラクタをつくってはスクラップ&ビルドを続けるのであれば、賽の河原のごとく何も残らない。
当たり前だがリーダーの資質が重要
“上から目線”の“技術実証”型事業は失敗する
では、自治体の事業で失敗しないためには、何が必要か。
まず、「核となる場」が不可欠だ。知と経験と社会関係資本(ネットワーク)を積み重ねていく、地域の拠点である。
この「地域の核」を形成するには、必要な要素が3つある。