「自動運転を町の産業に」永平寺の町の未来を見据えたチャレンジ深山霊山の地、永平寺。約70の建物が並ぶ。主要な法堂、仏殿などは回廊で結ばれているのが特徴 Photo by Kenji Momota

 なぜ、永平寺で自動運転なのか――。

 1244年、道元が開山した福井県・永平寺。禅寺として日本のみならず、海外からの観光客にも、その名が知られている。

 この地で、経済産業省の『無人移動自動走行による移動サービス』(別称:ラストマイル自動走行・端末交通システム)の実証試験が、今秋後半から平成30年度末にかけヤマハ製のゴルフカートを使って行われる。

 そう聞くと、多くの人は「観光スポットを回遊する乗り物」を想像するが、実態は全く違う。

「自動運転を町の産業に」永平寺の町の未来を見据えたチャレンジえちぜん鉄道の永平寺口駅 Photo by Kenji Momota

 確かに、走行する場所は2002年に廃線となった旧京福電鉄永平寺線の跡地で、現在は遊歩道の『永平寺参(まい)ロード』全長6.025キロメートルだ。起点は、福井駅から恐竜博物館で有名な勝山市の勝山駅を結ぶ、えちぜん鉄道勝山永平寺線の永平寺口駅。終点は、曹洞宗・大本山永平寺の参道に近い旧永平寺線の門前駅となり、観光客の足としての利用も期待される。

 しかし、実証試験に参加する永平寺町の狙いは、もっと大きい。

 換言すれば、永平寺町は多くの社会課題を抱えているのだ。