モチベーション神話は信じないほうがいい

 また、『小さな習慣』は、モチベーションに頼ることの危険性も教えてくれている。世間では生活改善のいちばんの解決策のように取り上げられている「モチベーション」だが、それ自体が生活を改善することはあまりないという。

 習慣化させるためにモチベーションを上げる方法を選ぶと、それは、ほかの何よりそれをしたいと思う強いモチベーションでなければならない(たとえば、運動をするのであれば、ポテトチップスを食べながらテレビを見たいと思う以上に、運動をしたいという気持ちが強くなければならない)。また、行動が習慣に変わり始めるころ、その行動への熱意が薄れ、退屈でつまらなく思えてくる……というのもよくあることだが、モチベーションが頼りにならないのは、こういった「感情」に基づいてしまっているからだ。

 そう、習慣化に必要なのは、モチベーションではない。昔から言われているように、やはり「意志の力」が大切なのだ。「だから、その意志の力を持つのが難しいから続かないんじゃないか!」とわめきたくなった人も安心してほしい。小さな習慣であれば、その意志の力もほとんど必要としない。小さな習慣は、ほんのわずかな意志の力で最大限の勢いを生むように考え出された完璧なシナリオなのだ。

ものぐさでズボラな人間の救世主!

 意志の力はすべての行動に必要なものだが、疲弊していてやる気になれないときは、わずかな意志の力でも呼び起こすだけで脳が消耗してしまう。でも、あまりに目標が小さいと、脳はそれに対して警戒心を持つことはない。「腕立て伏せを1回」という目標でも厳しいなら、まず「床にうつぶせになる」を目標にしてもかまわない。「小さな習慣」に関しては「小さすぎる」は存在しないのである。

 小さすぎて失敗するはずがない行動を毎日繰り返す、これがキーポイントなのだ。「腕立て伏せ1回」ができたら、もう1回くらいできそうな気がしてくるし、目標どおり1回で終わってもまったく罪悪感を覚える必要はない。

 『小さな習慣』では、ぐうたらでものぐさでズボラな人間でも続けられる解決策が示されている。まずは本書を毎日1ページずつ読むことを小さな習慣として、その解決策を探ってみてほしい。気づいたら、毎日1ページ以上読むのが習慣になっているだろうから。