突発オーダー、トラブル、クレーム……仕事の流れを狂わせる横入りの仕事に、チームとしてどう対処するか。カギはチーム内に「既視感」を醸成すること。ベストセラー『職場の問題地図』で話題の人気業務改善士が書き下ろした、生産性向上のヒント集『チームの生産性をあげる。』から一部を紹介。

 突発オーダー、急ぎの問い合わせ、トラブル、クレーム……私たちを悩ませる「横入り」。生産性をあげるには「横入り」にいかに迅速に対応するか(あるいは捨てるか)にかかっているといっても過言ではありません。

「横入り」をナントカするためには、(1)可視化、(2)共有化、(3)向き合い方の3つのステップが大事。前回は(1)をご紹介したので、今回は(2)の「共有化」について解説します((3)は次回解説します)。

 なお、情報システム(IT)の運用の世界では「横入り」を「インシデント」と呼んでいます。ここから先、IT業界に倣って横入りの仕事をインシデントと呼ぶことにします。「インシデント=本来の仕事の流れを阻害する(可能性含む)邪魔者」という意味です。

既知か未知か?
横入りをチームで共有する

●ステップ(2)共有化
 インシデント に遭遇したとき、その事象が「既知」なのか「未知」なのかを考える習慣を持っておくと、インシデントへの対応効率が向上します。

・既知 → すでに遭遇したことがある経験済、学習済の事象
・未知 → はじめて遭遇する事象

 既知インシデントであれば、あなた(たち)は対応方法を知っているはずです。すでに経験して学習しているわけですから。既知インシデントなのに、対応方法がわからない。「ええと……」と考えてしまう。これは改善の余地ありです。反省して、対応マニュアルを作るなり素早くさばけるための工夫をしましょう。

 未知インシデントは、ゼロから対応方針と対応方法を考えなければなりません。インシデントを受けた本人が1人で判断できなければ、チームメンバーに相談し、チームで決めましょう。

 こうして決めた対応方針と対応方法は、インシデント管理簿の対応履歴欄(収まりきらなければ別のドキュメント)に記録して共有します。この流れを、「未知インシデントを既知化する」と言います。

インシデント管理簿が身を助く

 そのインシデントが既知か未知かを判断するのに、インシデント管理簿が活躍します。インシデント管理簿を見て、過去に同じ事象(同じ問い合わせ、同じようなトラブルなど)があれば既知、なければ未知と考えます。

 未知インシデントであっても、過去に類似事象はないか? インシデント管理簿から、過去にどう対応したかを知ることができれば、対応方針および対応方法を考える作業が早くなります。すなわち、意思決定が迅速化します。

個人にとっての既知/未知と、組織にとっての既知/未知

 あなたにとってはそのインシデントははじめてでも、実はチームの他の誰かが過去に経験しているかもしれません。これをハズすと、

「以前、他の方に説明しましたけれど(また同じコト言わせるんですか)……」
「前任者と対応が違うのは、どうかと思います!」

 こんなクレームでてんやわんやする羽目になります。インシデント管理簿を見れば、過去に他の誰かがどう対応したかどうか知ることができます。ムダなクレームを生まず、ムダに気まずい思いをしなくてよくなります。

 個人にとっては未知でも、組織にとっては既知。これに気づけるか、気づけないかでチームの信頼も生産性も大きく変わってきます。しっかりと記録されたインシデント管理簿は、個人の知識と組織のノウハウの宝庫。うまく活用したいものです。