職場の生産性を最大化するにはどうすればいいのか? 実は、3つの切り替えが集中力を途切れさせ、多くのムダを生んでいる。ベストセラー『職場の問題地図』の人気業務改善士が、生産性をあげる方法を伝授。新刊『チームの生産性をあげる。』から一部を紹介。
切り替えのムダ
一度に集中できる環境をどう作るか?
日常の景色に溶け込んでしまっていてなかなか気づきにくいムダがこれ。切り替えのムダ。仕事で発生する切り替えは、大きく3つあります。
(1)場所の切り替え
(2)気持ちの切り替え
(3)環境の切り替え
(1)は文字通り、移動を指します。
・出張の移動
・細かな事業所間移動
・通勤のための移動
言わずもがな、移動の時間は何も生みません。それどころか、プライベートの時間も体力も消費します。移動手段の遅延や停止のリスクも伴います。当然、コストもかかります。
・Webミーティング/テレビ会議/電話会議を活用する
・移動を伴う打ち合わせを減らす
・週何回か、テレワークを許可する
このように、移動を減らす手段はあります。減らせる移動はないか? これは大いに検討する価値があります。
(2)は気持ちを切り替えるムダ。これまた、仕事の生産性を大きく下げます。
・作業中に電話が入った
・集中して考え仕事をしていたときに、突発の仕事が横入りした
みなさんも少なからず経験があるでしょう。集中力が途切れてしまう、あのイラっとする感じ。そして、一度集中が途切れると、仕事の内容を思い出すのに時間がかかったり、それまで考えていたことを忘れてしまったり、電子ファイルを再び探したりなど、リカバリーのためのムダな時間とストレスが発生します。
特に電話は厄介。こちらの都合はお構いナシに、かけ手の都合だけで連絡してきて、いきなり時間と集中力を奪われますから。とはいえ、電話を廃止するのも現実的ではない。横入りの仕事もなかなか断れません。
・「いま、集中作業をしています!」と明示する(例:口頭で宣言する。パソコンの共有スケジューラで示す。自席に立て札を置く)
・自席以外の場所にこもる(例:会議室、応接室)
・テレワークを利用し、自宅などオフィス以外の場所で仕事に集中する日を作る
このように、自分なりに仕事に集中できる環境を作るのも生産性をあげるための工夫です。
(3)のムダも見逃せません。たとえば出張や事業所間移動。移動時間ももったいないですが、出かける準備をする時間、到着後に空いている出張者席を探す時間、パソコンを立ちあげる時間、ネットワークに接続する手間と時間。こういった、環境の切り替えで都度発生する時間とストレス。すべてムダです。
また、仕事とプライベートの切り替え。このムダも要チェックです。テレワークを導入すれば、仕事⇔プライベートの環境を一瞬で切り替えられます。あるいは、たとえ出社型の勤務形態でも「カジュアルな服装OK」にするだけでも景色は変わります。
私は「カジュアルウェアOK」の職場の勤務経験が長かったのですが、金曜日や大型連休前は会社からそのまま遊びに行ったり、旅行に出かけたりしたものです。いったん帰宅して、スーツを脱いで、カジュアルウェアに着替えて、そこから旅行に出発。この一連のムダを排除でき、仕事もプライベートも有意義になりました。
また、服装のカジュアル化は家族にも喜ばれます。私がかつて勤務していたNTTデータは、夏季はスーパークールビズを導入しています。スーツをやめ、ポロシャツで出社。妻(当時専業主婦)は「夏の暑い中、アイロンがけをする労力と時間が減った!」と大喜びでした。
仕事とプライベートの切り替えにかかるムダを減らす。この効果は大きいです(もちろん、「スーツ姿のほうが気持ちが切り替わって仕事が捗る」タイプの人は、いままで通りスーツを着ればいいでしょう)。
切り替えのムダは日常の「当たり前」に溶け込んでしまっていて、なかなか気づきにくく、指摘しにくいかもしれません。しかし、これこそネガティブな仕事。また、やり方次第ではコストをかけずに減らすことができ、なおかつ仕事の生産性を向上させることができます。
「その切り替え、ムダじゃない?」
そんな気持ちで、毎日の何気ない一連の行動を見直してみましょう。
(この原稿は書籍『チームの生産性をあげる。――業務改善士が教える68の具体策』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)