上下の歯と歯を接触させる
「TCH」が最大の要因

 ちなみに、長年に渡って顎関節症について研究し、このガイドラインの作成にも関わった木野孔司氏(東京医科歯科大学の元准教授、日本顎関節学会元理事)によると、かつては「噛み合わせの悪さ」や「ストレス」が、顎関節症の主たる原因とされていたが、近年の研究では、上下の歯と歯を接触させる「TCH」という習慣こそが、最大の要因になのだそう。

 多くの人が知らない間にも、医療の常識は変わっていたのである。

 木野氏ら、東京医科歯科大学の研究チームは2000年に、同大の患者に顎関節症についてアンケート調査を行った。

 精神的要因、行動学的要因、外傷性の因子、骨格などベースとなるものの解剖学的要因など、34項目の有無を尋ねた結果浮上したのが、「TCH=上下の歯を接触させる癖」。

「従来は、精神的な緊張、不安の程度、頬杖をつく癖、硬い物をよく食べるなど、様々な要因が挙げられていたが、精査した結果、最終的に残った意味のある要因は、歯を接触させる癖と年齢だけでした」(木野氏)

 患者の8割がこの癖を持っており、癖を持っている人は、持っていない人の2倍、症状が悪化するという。

 意外なのは、この「歯を接触させる」という行為が、「歯を食いしばる」とは違って、軽く接触するだけ、ということ。

「軽い接触だけでも、顎関節が圧迫され、筋肉は緊張状態になる。1日の合計で20分を超えている場合は要注意です。小さな力とはいえ、長時間に渡って負荷がかかり続けると血流が悪化し、顎が痛くなるだけでなく、肩こりや頭痛も引き起こします」(木野氏)