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(東京地方裁判所 平27年3月24日 判決 より)
ある通信販売業者 (以下、ユーザー)が、基幹システム刷新のための開発をITベンダー(以下、ベンダー)に発注しました。開発金額は約13億円程度でした。
ところが、この開発がうまくいかずに、スケジュールが遅れに遅れて、結局、当初予定から数か月経っても完成の見込みが立たないことから、ユーザーは契約の終了をベンダーに通知しました。
これについてベンダーは、その契約解除が一方的であるとして、その時点で未払いだった約5億円の費用を請求して、裁判を起こしました(それ以外の約8億円は既に支払い済みでした) 。
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「プログラムの1本すら納品していないのに5億円も請求するなんて、ITベンダーってのはそんなに厚かましいものなのか?」
そんなふうに思われる人がいらっしゃるかもしれません。無理もありません。
ところが裁判所は、これについてベンダー側の主張を認める判決を出し、発注者に費用の支払いを命じたのです。
判決の内容は下記のようなものでした。
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(東京地方裁判所 平27年3月24日 判決 より <続き>)
確かに、ベンダーの納品物の中には、期限通りに納められなかったものもあった。
しかし、 下記の前提となる事実によれば,ベンダーに帰責事由はないと言わざるを得ない。
・ユーザーが行なうべき分担作業であるインターフェースの仕様整理がされていなかった
・ベンダーが移行作業方針および移行処理方式の確認を求めたのに対し,ユーザーの回答がなかった ・検証環境の構築が、ユーザーの都合で延伸された
※判決文は筆者が要約しています。
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この判決は、要するに、「システムが完成しなかったのは、発注者が自分の役割をきちんと果たさなかったからで、ベンダーに責任はない」と言っているのです。
みなさんは、どのように思われるでしょうか?
「ふざけるな」と思われるでしょうか?
それとも「それじゃあ、仕方ない」と感じるでしょうか?