偽装死亡扱いにしても
保険会社に必ずバレる!

 そういったノウハウを駆使する凄腕『プライバシー・コンサルタント』アハーンだが、偽装死亡には反対だ。理由はシンプル。多くの偽装死亡は、保険金の搾取も目的とする。そりゃぁそうだ。偽装死亡の理由の一位は借金だ。それに、偽装死亡がうまくいったとしても、その後の人生、お金がなければどうしようもない。保険金の入手は必須なのだ。しかし、保険会社は甘くない。必ずばれてしまうというのだ。

 ならばとグリーンウッドが次に選んだ取材対象は、保険会社の依頼をうけて捜査する偽装摘発請負人、エリート私立探偵エリート・ランバムである。ランバムによると、偽装死亡はほぼ不可能だという。これまでに、一人を除き、依頼を受けたすべてを暴きだしたというランバムだけに、その言葉には説得力がある。

 偽装死亡が簡単にできるのは、フィリピンらしい。アメリカ国内では、事故を偽装して、適当な遺体を見つけるのはきわめて困難だが、フィリピンでは比較的たやすくできる。なんと5000ドルもあれば手配できるというのだ。しかし、これには制限がある。見かけがフィリピン人に似ていないとさすがに無理である。それだけでハードルが十分に高いではないか。いかに死亡偽装が難しいかを説くランバムだが、その最大の理由のひとつは、過去の人間関係を断ち切ることができるか、ということにある。ごもっともだ。死亡偽装したが最後、それ以前の知り合いとは会うことができなくなる。そんなことをしたらバレバレだ。

 それでも、偽装死亡をなしとげて、5年間隠れとおすことに成功した男がいる。イギリスでカヌーマンとして広く知られるジョン・ダーウィンである。この男、カヌーに乗って海に漕ぎ出したまま行方不明になり、まんまと保険金を受け取ることに成功し、潜伏する。もちろん保険金を受け取ったのは本人ではなく、妻だ。偽装死亡の後、どこで過ごしていたたとお思いだろうか?なんと、ほとんどの時間を自宅の二階で過ごしていたというからびっくりだ。あることがきっかけになって、生存していることがわかり、逮捕される。偽装死亡だとはつゆ知らなかった息子二人は激怒し、絶縁状態になる。完璧な共犯者であった妻とも仲違いする。にもかかわらず、ダーウィンは相変わらずえらく意気軒昂だ。実話とは思えない驚愕のエピソードである。