ダメもとで手を挙げてみたら……
『ストーリーとしての競争戦略』から生まれた「ストーリー」とは
――弊社の営業担当からは、仕掛けるときはかなり大胆だと聞いています。仕掛けたいという衝動を生むような書籍の共通点ってありますか?
岡崎 ビジネス書を買う人って、成長したい、というふうに前向きな気持で書店に来ていると思うんですよね。そんなお客さまが期待できちゃうような企画には惹かれます。
変な表現なんですけど、説得力のある「なにこれ!?」、という感じです。見た感じ「なにこれ!?」だけど、よくよく見たら「なるほどな」みたいなもの。
――そういうものだと、「仕掛けてみたい」と思うんですか?
岡崎 そうですね。そういう嗅覚に頼って仕掛けることもあります。ですが、発注するときは中身を読める場合はできるだけ読んでみて、「あのときはこうだったから、今度は……」というふうに自分の中で分析して、発注数を決めています。
――実際に売っていて印象に残っている書籍はありますか?
岡崎 『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)ですね。あの本、結構分厚いし、価格もちょっと高いんです。それもあって最初は読んでいなくて。でも、あれよあれよという間に売れていくし、書評にも載るしで、ちょっとこれは読まないとダメだって思って。それで実際に読んだら……、面白かったんです。読もうと思ったときには仕掛けてはいたんですけど。
――仕掛けながら読んで?
岡崎 はい。同僚もPOPを書いていてくれたんですけど、読んでから自分でも書きました。
その後、思い切って著者の楠木建さんに「フェアやりませんか?」と提案しました。そしたらOKをいただけて、「楠木建セレクトフェア」をやれたんです。この流れは、その後「野中郁次郎セレクトフェア」にもつながりました。楠木さんが挙げてくださった本は、参考文献で挙げられているものもあったんですけど、「え、これも?」みたいな驚きも多くて興味深かったです。
このフェアでは、もうひとつ面白いエピソードがありました。月に一度、勉強会をやっているんですけど、その勉強会で『ストーリーとしての競争戦略』を取り上げたことがあったんです。その場で、参考文献のなかにあったある絶版本の話になりました。それがどこからか伝わって、三省堂書店が始めた「三省堂書店オンデマンド」という事業を通して、この絶版本を会社がつくってくれたんです。それも一緒に置いたら売れましたね。
――それ自体がすでにストーリーになってますね!
岡崎 たしかにそうですね。読んでいて、「これも一緒に読みたいかな」とか「こんなのもあったら楽しいな」とか、考えるんですよね。
さっき言った「野中郁次郎フェア」も、「一橋ビジネスレビュー」で野中先生の特集を組まれると聞いたとき、昔読んだ本が面白かったのを思い出して、「じゃあフェアやります」って手を挙げて。ダメもとでお願いしたら選書してくださって。野中先生にいただいた色紙は「家宝」ですね。