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先進デザイン企業のアドビが
デザインの力をさらに強くするわけ

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第433回】 2017年7月5日
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 今や日本企業の間にも広まっているデザイン思考とは、新製品開発のみならずさまざまな問題解決に際して、状況を多面的に理解した上で重要ポイントを絞り込み、プロトタイプ(試作)づくりとユーザーからのフィードバックを得るループを何度も高速で繰り返して最終目標へ近づいていくやり方だ。

 デザイン思考は、もともとデザイナーが用いていた方法論が、今では広い課題に用いられているもので、デザイナーはそれを企業内で伝授する立場にもあると言える。

 マイロルド氏は、「デザイナーが社内でデザイン思考を有効に行うためには、3つの柱がある」と説明する。ひとつは、デザイナーがビジネスとテクノロジーの両方の言語を理解していること。ふたつ目はデザイナーが製品の機能を深く理解していること。3つ目がデザイナーは社内で橋渡し的な役割を担い、またビジネスやテクノロジーのあり方をビジュアライズできることだ。

 今でもデザイナーという職能に対しては執拗な誤解があって、製品の完成間近になって最後に飾りをつけるデコレーターに過ぎないと捉えている人は少なくない。だが、もともとエンジニアが考えていたインターフェイスデザインは、今やデザイナーなしには成り立たなくなっている。また、最近のデザイン専門学校にはビジネス修士号(MBA)コースを併設するところもあるなど、ビジネスを理解するデザイナーも増えている。そして、何よりもユーザーに対してエンパシー(共感)を感じられるデザイナーの感性が、現在の製品やサービスづくりには貴重なものとなっている。

デザイナーを開発チームに取り込む

 また、あらゆる開発段階でデザイナーをチームに取り込むことは、芯からユーザーの要望や必要性に沿った製品を作るのに必須なものとなっている。成功している企業はそうしたチームづくりを核心としている。

 アドビも同様だ。同社のデザインチームは中央化された独自の部署ではあるが、デザイナーはあらゆる製品開発で、製品マネージメント、エンジニアリングチームと同等にエクスペリエンスの開発に関わる人員となっている。

 「もちろん、チームワークにはフリクション(摩擦)がつきもの」(マイロルド氏)だが、開発を途中まで進めたところで、製品のエクスペリエンスが悪いことがわかって作り直すほど難しいことはない。直感的なエクスペリエンス(ユーザー体験)を提供するメンバーとして認められれば、デザイナーは開発の初期から参加することが歓迎される。アドビの開発では、製品を小部分に分けてテストを繰り返す「アジャイル方式」を採用しており、これはデザイン思考にも沿った方法論だという。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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