えっ? エスカレーターって歩いたらいけないの? と驚いた人もいるだろう。実は、そうなのだ。片側を空けて、歩行者を通すことが都会的で大人のマナーだと思い込んでいた人にとっては、衝撃的な事実だろうが、事実は“歩行NG”なのである。

なぜ、歩行やベビーカーはNGなのか

 では、なぜエスカレーターの“片側空け”や“歩行”が誤りなのだろうか。日本エレベーター協会によると、「すり抜けざまに他の利用者や荷物と接触して、思わぬ事故を引き起こすことがある」ことが主な理由だという。バランスを崩して転倒すると、ほかの利用者を巻き込む大きな事故にも発展しかねない。さらに、同じく安全上の理由から、ベビーカーでエスカレーターを利用することも、原則禁止としている。

 また、「片側に寄らなければいけない」というルールにより、不自由を強いられる人もいる。例えば、左手を怪我している人や障害がある人は、左側に寄る関東地域などのルールだと、手すりをしっかりと掴むことができずに危険なのだ。実際に、各団体は、毎年のように啓発イベントを行い、“間違ったマナー”の是正を試みている。

 しかし、“片側空け”や“歩行”が誤りという認識は、広く浸透しているとは言えない。日本エレベーター協会が2016年度に実施した調査によると、エスカレーターを歩行してしまったことがある人は83.9%。4年前の2012年度は85.8%でわずかに減少はしているものの、ほとんど利用者の意識に変化はないと言っていいだろう。

わかっていてもやめられないエスカレーターでの歩行

 一方で、人やカバンなどにぶつかり、危険と感じたことがあると回答した人は57.2%に及んでいて、半数以上が「歩行は危険」という意識を持っている。さらに、エスカレーターを歩行していて、人とぶつかったことがある人は27.5%、実際に怪我をしたことがある人も3.5%いることがわかっている。危険だとわかっていながら、ついつい“片側空け”や“歩行”をしてしまうというのが実態にあった感覚であろう。

 ここにマナーや常識の難しさがある。いけないことだとわかっていたとしても、ほとんどの人が“片側空け”や“歩行”を行っている以上、それに従わなければ実際の通行に支障が出てしまう。仮に関東で右側に寄り、手すりをつかまっていたら、急いで歩行しようとする利用者との間でトラブルに発展してしまう可能性があるだろう。「横に広がって乗っているなんて、歩行する人の邪魔だ」と言われかねない。