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任天堂はなぜ「ニンテンドー3DS」を値下げしたか

石島照代 [ジャーナリスト]
【第22回】 2011年8月18日
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 また、ポケモンタイトルを値下げと同時投入してきたことから、先ほど述べた通り「子ども市場」を固めにきたと考えられる。現在の経済状況で子どもに2万5000円を出してやれる家庭はそう多いとは思えないが、子どもをなるべく家の中で遊ばせたい親御さんもいるだろう。つまり、今回の値下げはファミリーユーザー層に向けた任天堂版「子ども手当」だった、という見方もできるのではないだろうか。

 井上研究員も「任天堂はネットで声の大きいゲーマー層に対して不評であっても、クリティカルな問題は避けられるとも考えているのでは。岩田社長は3DSの中心的早期購入者について『ゲームを熱心に遊ばれる方』、『主に若い男性の方』と分析しています。女性や子どもといったより広いマーケットを狙うこと見据えているのならば、ここを外しても、まあどうにかなるとも考えられる。もちろん、任天堂もすすんで不興を買いたくはなかったでしょうが」と指摘する。

3DS同時発売タイトルに
「ニンテンドッグス」の続編が選ばれた理由とは

 したがって、この値下げの成否を正確に判断するためには直近の年末商戦期後を待たねばならないが、まずは来月9日に新色「フレアレッド」の発売を控えた米国市場の動向がひとつのマイルストーンになりそうだ。まずは米国市場のてこ入れも勘案して値下げしたのだとすれば、この時期の値下げは理解できる。ここで弾みをつけて、11月のサンクスギビングデー以降の年末商戦を乗り切りたいのではないだろうか。

 また、値下げの成否をどのあたりで考えるかという指標として、DSビジネスが拡大した過程を紹介したい。上の表はDSソフトの世界売上トップ5を並べたものだが、上位4位には共通項がある。それは、3~5年くらいかけて年平均400万本を売ったということだ。

 上位4位のソフトの売上推移を示したのが下のグラフだ。オレンジのラインはこの4本のソフトの平均値である430万本に引いてある。この430万本という数値は世界トップレベルを目指すのであれば超えねばならない壁とも言えるだろう。

 DSが発売された2005年にこの壁を越えていたのは「ニンテンドッグス」だけであった。この観点から考えると、3DSの発売日に続編にあたる「ニンテンドッグス プラス キャッツ」が入っていた理由は頷ける。マリオ・ポケモンシリーズ以外でこの430万本の壁を越える可能性が高いソフトだからだ。事実、今年の3月末時点で唯一ミリオン越えを記録し、170万本以上が売れている(緑の★が該当する)。3DSビジネスが成功するかどうかは、このニンテンドッグスの続編の売上も大きなカギを握るだろう。つまり、マリオ・ポケモン以外でコンスタントに年に400万本売れるソフトを3本程度出せるかどうかも、3DSの成否を検討するポイントになりうるということだ。ただし、こんなことは任天堂以外のソフトメーカーでは到底できないが、それがDSビジネスではできたことも任天堂の強さを証明している。

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石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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