それでも私は、200万円程度で一線を引くことにしたいと考えます。7割近い人が100万円程度に収まっていることから、100万円を一つの目安にするという人がいてもいいと思います。どこまでも安心を求めていくと、きりがないからです。
実際、治療費を全額補償する「がん保険」もありますが、30代の夫婦が80代まで契約を続けると、2人分の保険料負担総額は700万円を軽く超えてしまいます。一般的な年収の家庭で、一生乗らないかもしれないベンツを所有するようなことになる?と感じます。
また、先進医療についても、「300万円くらいかかる治療法がある」という事実より重要なのは、現実にどれくらい保険金支払いが発生しているのかということでしょう。私がある保険会社の「医療保険」(当然、がんにも対応しています)について調べたところでは、300万円程度の保険金支払いは、せいぜい加入者の5万人に1人弱というところでした。発売後の経過年数につれて、もっと増加するとは考えられるものの、あまり神経質になっても仕方がない治療だと感じます。
そもそも保険という商品の価値は、
安ければ安いほど上がる
「何かあったらどうするのだ?」という問いかけは無視しにくいものですが、何事もなく生き長らえるリスクもあるはずです。高額の治療が患者さんや家族を苦しめている事例を引き、「お金の切れ目が命の切れ目になっていいのでしょうか」と書き、手厚い保障がある「がん保険」を推奨するジャーナリストもいますが、「がん保険」への依存度を高めることは、自己資金というお金との「切れ目」を大きくする側面もあるはずです。
なにより、罹患率が低い年代から「騙されたと思って入っておく」という選択をするには、現行の「がん保険」の価格設定は不当に高いと思われます。大手企業向けに案内されている「団体がん保険」では、個人向け商品の半額以下という実例もあるのです。先進医療に対応する特約などを目玉にした「付加価値競争」に背を向けるお客様がいなければ、いつまでたっても、わかりやすい商品による「価格競争」が進みません。