匿名のまま社会とつながれるのはどのエリア?

 これまでの連載で、フェイスブックのような現実生活のソーシャルメディアは、参加者の帰属意識(ロイヤルティ)の矛先が友人どうしの交流に集中しているので、それが商品や企業へと転化することはなかなか起こりづらいという問題を指摘しました。

 また、情報交換のエリアも、利便性や有効性が求められ、情報提供を優れて行う者が評価される場所であるため、そこでは自社を特別視してほしいとアプローチする企業の姿勢は敬遠されるという問題を見てきました(「第2回 ソーシャルメディアとサクラの微妙な関係」参照)。

「現実生活のソーシャルメディア」も「情報交換のソーシャルメディア」も難しいとなれば、残るは――。

 現実生活のエリアが消え、情報交換のエリアも難しいとなれば、価値観と関係構築のソーシャルメディアのエリアが、最後に残ることになります。関係構築のエリアは、冷静な批評を求める情報交換のエリアとは違い、お互いに特別であろうとすることが求められます。企業による「私たちと特別な関係になってください」という呼び掛けにも拍手が起こるようになります。

お互いに特別であろうとすることが求められる「価値観×関係構築」のエリアならば、価値観でつながる思いやり空間を企業がつくりあげる余地が生まれる。