「【第1回】『ソーシャルメディアは死んだ』と言われる日は近い…?」では、ソーシャルメディアを4つのタイプに分類したうえで、フェイスブックやミクシィといったSNSを企業が自社のマーケティングに活用するには乗り越えなければならないハードルもあることを指摘した。
今回はさらに一歩踏み込み、企業がソーシャルメディアをマーケティングに用いることの難しさについて考えていく。足掛け12年、300社のクライアントとともにソーシャルメディアに向き合ってきた武田隆氏の目に、現在のソーシャルメディアをめぐる取り組みはどのように映っているのだろうか――。
友人どうしの会話に土足で踏み込む行為
前回のコラムで、このままではソーシャルメディアが利用者から見放されてしまうかもしれないという危機感を共有しました。それでは、企業にとってはどうでしょうか? 企業もいずれソーシャルメディアに見切りをつけてしまうのでしょうか?
ソーシャルメディアに打たれる広告が、通常にくらべて反応が鈍いということはすでにご存知と思います。日本における一般的なバナー広告のクリック率は0.09%とされていますが[Global Benchmark Report 2009、Eyeblaster Benchmark Insights、2009]、SNSサイトを見てみると、日本より反応が高いといわれるアメリカのケースですら0.004~0.13%と低くなってしまいます。
利用者どうしの自然な会話の途中に、無関係な企業の広告が唐突に表示されることに対して、消費者の反応は想像以上に冷ややかです。
広告が難しいのであればということで、口コミの発信者をお金で雇い、ソーシャルメディアで一般の利用者を装わせ、企業の宣伝をさせるという、いわゆる「サクラ」を雇う手法も生まれました。
しかし、サクラによる書き込みは無機質なだけでなく、その行為に対する消費者からの強い反発を招き、炎上(消費者の反対運動がインターネット上に口コミで流行すること)した例も多数見られました。
ソーシャルメディアにおける企業と消費者の関係構築はたいへん難しく、今をときめくフェイスブックも、サクラと同じような“さむい”空気をつくってしまう危険性をはらんでいるといったら、読者の皆さんは驚くでしょうか。