言葉の行間を読まず
自分をアピールするだけの人が増えている

 自分が頑張っていることを上司に評価してもらいたがる人が増えています。

 ある企業で実際にあった話ですが、部下思いの上司が若者を食事に連れて行ったり、自宅で催すパーティーに呼んだりしていたそうです。上司としては、その行動こそが若者を気に留めていることだったのです。そして、当の若者もそう理解してくれていると考えていたといいます。

 しかし、若者は違いました。パーティーはパーティー。もっと具体的な仕事の成果を褒めてもらわないと自分が承認されたことにはならない。こんな悲しいすれ違いが起きていたのです。

「直接仕事を褒められたわけではないが、わざわざ休日に自宅で催すパーティーに呼んでくれているのだから、この上司は私のことを承認してくれている」

 行動の行間を読む、あるいは言葉から類推するということができない人が増えています。通信簿を渡されて、明確に評価されないと理解できなくなっているのです。

 ただ、無理からぬ点もあると思っています。

 国際的な会議では何も言わないと無知か無関心と思われる。日本人はもっと自分の意見を表明しなければならない。そんな風潮がすべてに当てはめられ、急速に日本人は自分をアピールすることを強く奨励されてきました。

 グローバル企業で働く人の話を聞くと、日本以外の国の人は、自分がいかに高い能力の持ち主であるかを盛んにアピールするそうです。日本人は、よろしくお願いします程度しか言わず、とても寂しいとその人は言います。

 その話を聞いた学生は真剣でしたが、私などは周囲がそんな人ばかりになったら息が詰まりそうだと考えてしまいます。

 若い人のなかにはコミュニケーション能力に自信があると言いながら、自分の主張だけを延々とアピールするだけで、相手の話をじっくりと聞こうとしない人もいます。そればかりか、相手の内面にまったく関心を示さない人も増えてきたように思います。