A 親自身がラク、ですか。なるほど。私の妻は、結婚当初はそれほどでもなかったんですが、子どもが生まれてからというもの、それはもう育児に熱心になりました。何か鬼気迫るものを感じるというか。
カヨ子 そういうお母さん、いま多いです。まじめで高学歴で。だけど、子育ての仕方なんて誰にも教わってこなかったから、核家族のなかで頼れるものは、本や雑誌、インターネットくらいしかないんですね。
ネットの育児相談コーナーなんて見たら、えらい小さなことでも不安になって投稿してるんです。赤ちゃんは十人十色。自分を信じて子育てしたらええのにな…と思います。
A 自分の育児に自信がなく、不安なんでしょうか。
カヨ子 最近は、親や姉妹が近くに住んでないことが多いでしょ。だから、ちょっとしたことを相談したり、『あんた、これちょっとおかしいで』とか、ふだん接しながら言ってくれる人がいないんですよ。それで、悩みを一人で抱え込む。泣いてるわが子に怒鳴ったり、手をあげたりするのは、自分に対する不安の裏返しです。
A そういえば、虐待で子どもを死なせるような事件が、毎日のように新聞に載っています。
カヨ子 そこまではいかないにしても、虐待予備軍みたいな人は結構いると思います。私は、お母さんが育児で精神的にまいってしまう、というのは今後もどんどん増えると思いますよ。
A そうですか…。私の場合、仕事で夜遅く帰宅すると、たいてい妻が不機嫌なんです。子どもと1日一緒にいて、なぜそんなに不機嫌になるのか、ちょっと理解できないんですが…。
カヨ子 男の人は、そう思うかもしれませんね。けど、赤ちゃんの特性に慣れてない新米お母さんが、まだ上手にしゃべれんような子と1日ずーっと家の中におったら、キツイと思えることもあるんです。
言うことは聞かない、やってほしくないことばかりやる、きれいに並べた料理をひっくり返す、化粧品をばらまく…。赤ちゃんは赤ちゃんなりに親を試してたり、好奇心に駆られてさわってみたりと、いろいろ理由があるんですけどね。
A そういうものなんでしょうか。