●組織的サポートの強化

 第二に、P&Gは転換的持続的事業と破壊的事業の開発に向けて、組織面での支援を強化した。

 従来のニュー・グロース・ファクトリー・チームよりも規模や範囲が大きい新事業創出グループをいくつか立ち上げ、そのための経営資源とマネジメントをコア事業から慎重に切り離した。各グループはゼネラル・マネジャーが率いる専任チームとし、複数事業にまたがるアイデアを開発すると共に、まったく新しい事業機会も追求した。

 あるグループは、P&Gのビューティ事業とパーソナル・ケア事業全体を担当し、別のグループはハウスホールド・ケア事業(ファブリック・アンド・ホーム・ケア事業とベビー・ケア・アンド・ファミリー・ケア事業部の母体ユニット)を担当する。第三のグループであるフューチャー・ワークスは、主に異なるビジネスモデルの可能性に重点的に取り組む(最近では、インド企業のヘルスポイント・サービシズとのパートナーシップの実現に一役買った)。

 これらの新グループは、ともすれば見過ごされがちなアイデアに種子資本(シーズ・キャピタル)(立ち上げに必要な資金)を提供する。したがって、コーポレート・イノベーション・ファンドのようなP&Gの既存の支援策を代替するのではなく補完するものである。

 P&Gはまた、「ラーニング・ワークス」と呼ばれる専門チームを設立した。このチームは、消費者の購買意思決定や購買後の使用状況を理解するために行われる、市場実験の計画や実施を支援する。

●戦略立案とレビュー体制の刷新

 第三に、P&Gは戦略立案とレビューのプロセスを刷新した。

 イノベーションの評価と戦略の評価は、これまで独立して行われていた。しかし現在、CEO、CTO、CFOは、全社戦略、事業戦略、イノベーション戦略をはっきりと関連づけている。このように一つにまとめたことで、ある事業の脅威となりうる競争要因に関する新たな分析なども合わせて検討できるようになり、さらに多くのイノベーションのチャンスが掘り起こされた。

 このプロセスでは、今後7~10年間の成長目標を達成できるだけの確実性を確保するために、各事業ユニットにおけるイノベーションの「生産スケジュール」、あるいは成長機会につながるパイプラインについても検討される。評価対象には、フェミニン・ケアといった個々の事業ユニットだけでなく、ハウスホールド・ケアといった広い分野も含まれる。

 こうしたアプローチの変更を受けて、各事業ユニットは、必要とされる成長を実現するために、各種のイノベーションをどう組み合わせるか、判断を求められることになった。