我が国では税金の投入による住宅ローン金利や期間の優遇、税制優遇(減税)などによって上限なき新築住宅の建設が続いている。これは際限なき国債発行と同じ構図。世帯数が減少するなかでは、空き家の増加や資産価値の減少をもたらすが、なぜこのようなことになっているのか。価値の落ちない住宅はどう選べばよいのか。

他国ではどうなっているのか

 西欧では多くの国で、10年間の「住宅需要」「住宅建設見込み」を推計している。人口動態などの指標に基づき、住宅総量目標を設定しているのだ。金融政策を通じて物価上昇率にコミットする中央銀行のインフレターゲットと同様のイメージだと思えばよい。

※「経済調査研究レビュー」別冊(2009年10月)
「ヨーロッパにおける高層集合住宅の持続可能な再生と団地地域の再開発」翻訳版を基に筆者作成

 各国の世帯数あたりの指標をみると、低いのがスウェーデンの5.6%、イギリス7.2%、イタリア8.3%。多くが10%台で見込んでる。10年間で10%の住宅が入れ替わるということだ。我が国がこれを設定する場合、イギリスと同じ7.2%なら年間着工は35.9万戸。イタリアと同じなら41.47万戸。10%にするなら49.9万戸となる。

 ちなみに、割合が高いのは、アイルランド38.9%、スペイン31.2%、ギリシャ24.6%など。住宅バブルがはじけている代表3カ国。かつての我が国の年間120万戸ペースというのは20.8%と、住宅バブル国並み。住宅生産業界団体が目論む100万戸の場合で17.3%となる。

 一方我が国は2002年、中古住宅とリフォームの強化すなわち「ストック市場重視」への方向感を打ち出し、戦後40年継続してきた「住宅建設法」を2006年に廃止した。変わって同年「住生活基本法」を制定。住宅市場の憲法改正が行われ、本格的なストック重視政策が打ち出される下地が整った。

 しかし他先進国のように「住宅需要」「住宅建設見込み」を推計する【住宅総量ターゲット(住宅総量目標)】を設定しないため、景気対策として過剰に新築住宅がつくられ続け、日本全国、空き家だらけという状態なのだ。新築住宅価格の高止まりは、「生産者重視」の政策であって、今後は中古住宅価格の維持という「生活者重視」の政策に変わらなければならないのだが…。

 このままでは、各プレイヤーが都合のよい解釈をし、すでに800万戸を超える空き家がさらに無尽蔵に増加する恐れがある。総量の目標がなく、新築中古の内訳も見えないと、具体的にどのくらいの数であるのかイメージしにくく、解釈によってはどうととでもとれる余地を残している。

 とはいえ新築住宅を建てたい人も多いだろう。その住宅が価値を落とさないためには、次の点に注意しよう。