都市部におけるこれからの急速な高齢化や高齢単独世帯の増加を想定すると、コレクティブハウスは介護の集中化・効率化につながる。
コレクティブハウスは、従来の公共住宅に比べると中クラスの大きさの建物がいくつか連続することになり、都市の景観・美化に資する可能性がある。
公共住宅の利点を活かして、たとえば家賃に傾斜をつければ(学生は思い切って安くするなど)、1つのコレクティブハウスの中に、老・中・青が混在したコミュニティを作り出すことが可能となる。そして、老・中・青の混在が安定した社会の基盤となることは、過去の歴史が教える通りである。

 

 なお、民間の家主に対しても同じような意味で、借家をコレクティブハウスで建設する場合には、税制優遇を行い、またその入居者に対しても家賃補助を行えば、政策効果はさらに高まるだろう。

 20世紀後半のわが国では、4人家族が社会の標準であり、高度成長・終身雇用を前提として、人々は若いうちに多額の借入を行って住宅を取得し、定年時にローンを完済し、それなりの土地の値上がり益を享受できた。右肩上がりの世界の人生双六では、公営住宅や賃貸からスタートして、持ち家がいわば「上がり」であったのである。

 21世紀のわが国では、一人暮らしが社会の標準となり、低成長が常態となる中で、雇用の流動性が高まりつつある。このような社会では、人々はライフステージの変化に合わせて家具付き賃貸住宅を住み替えし、高齢になれば、公営のコレクティブハウスで、人々の絆を大切に生きていく方がより人間らしい人生が送れるのではないだろうか。そう言えば、明治・大正期の文学作品には、豊かな借家人生が数多く描かれていたような気がする。

(文中、意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)