これからアメリカで出版される注目の企業本は?
これからアメリカで出る本でも、注目のIT企業の内幕ものがいくつかある。日本でも旅館業法に引っかかるとされながらも、世界各国に進出して成功、国内でも定着しているAirBnBに関する本などだ。
ニューヨークではAirBnBのせいで、タダでさえ見つけるのが難しい市内の賃貸アパートの空室率が下がり、複数の物件で民泊業として儲けているオーナーをめぐって、AirBnB対ニューヨーク市長の訴訟になるなど、今やAirBnBは企業価値300億ドル、ヒルトンやマリオットよりも大きなビジネスとなる一方で、貸出人の差別行為や、借り手の破壊行為が問題になっている。そうした裏側の事情を、経済誌「フォーチュン」の編集者が掘り下げた内幕ものとして期待されている。(日本語翻訳権は日経ビジネスが獲得したようだ。)
もう一つは自動車配車サービスとして世界中でタクシー運転手を廃業に追いやっているUberの内幕もの、“THE GAME CHANGER”という本だ。こちらはニューヨーク・タイムズ紙のシリコンバレー担当記者の執筆によるもの。特に、変わり者として知られ、最近とうとう理事会と大げんかしてCEOの座を去ったトラヴィス・カラニックに密着し、ドラマチックな展開の本になるという(日本語翻訳権はイングリッシュ・エージェンシー担当)。
そしてもう一冊、ソフトバンクの傘下に入った日本のYahoo!はまだまだ元気だが、アメリカではすっかり衰退してしまったYahoo!の顛末を描いた本も企画されている。1994年にスタンフォード大学の学生2人がウェブディレクトリーとして始めたYahoo!の本国版は今年6月にとうとう解体されたが、その栄枯盛衰を設立当初のメンバー、ジェレミー・リンが“WE WERE YAHOO!”というタイトルのメモワールを描くという。
こういった一連の本を眺めていると、ウォールストリートが元気だった頃、マイケル・ルイスが書いていた『ライアーズ・ポーカー』や『フラッシュ・ボーイズ』といった本が思い出されてくる。若者が違法ギリギリのデリバティブで散々大儲けして、酒池肉林の乱暴狼藉を働いたような話だ。
FACE BOOKの創設者マーク・ザッカーバーグを描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」にも通じると思うのだが、彼らは何しろ若いというだけでなく、性格が破綻しているとしか思えない言動をとる。ろくに寝ないでプログラミングに明け暮れ、恩人を平気で裏切り、まるでゲームのようにユーザーを増やし、世界を征服していく。確かにすごいとは思うが、かといってビジネスのお手本にはならないような。むしろ、こういった本は反面教師として読んだ方がいいのかも。あるいは純粋なおとぎ話として。