ニューヨークと東京を往復し、世界中の書籍コンテンツに精通するリテラリーエージェント大原ケイが、トップエリートたちにいま、読まれている話題の最新ビジネス書を紹介する好評連載。第12回目は、ジョブズ、ゲイツ、ベゾス、ザッカーバーグ……IT長者たちの自伝的ビジネス本について。

ジョブズ、ゲイツ、ベゾス、ザッカーバーグ……IT長者たちの自伝本から何を学べるか?

IT長者たちの立身出世ストーリーは読み応え満載

 シリコンバレーで最新のITをベースに、“Disruptive”と呼ばれるほど斬新なSNSやネットサービスを生み出して、IPOで一躍ビリオネアになるような若者の立身出世のストーリー、と聞いてあなたはまず誰を思い浮かべるだろうか?

 スタンフォードやハーバードなど一流の大学に入ったものの、卒業のための勉強をするよりも実家のガレージでパソコンを組み立てたり、寮の仲間と全く新しいネットサービスを思いついてプログラミングに没頭し、結局中退。始動したサービスが瞬く間に普及してグローバル展開。若きCEOとしてIPOの声がかかり、株を上場して一夜にしてセレブに。

 そんな華やかなサクセスの裏では、友人の裏切り、スタートアップ前の資金繰りに奔走、経営方針をめぐってかつての同志と仲間割れ、プログラムにバグが出て徹夜で復旧、軌道に乗り出したら今度は既存企業に営業妨害だと訴えられ、不動産の値上がりはお前たちのせいだと地元民からバッシング…などなど波乱万丈であろう人生だったら読み物としてもスリル満点なのも必然。

 古くはスティーブ・ジョブスやビル・ゲイツから、そして今日大御所として米ビジネス界に君臨するジェフ・ベゾスやイーロン・マスクまで、IT起業家のバイオグラフィーは読み応えたっぷりなものが多い。

 ネット決済システムの「ペイパル」を立ちあげた初期メンバー、ピーター・ティール『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』(NHK出版、2014)は日本でもベストセラーになったし、南アフリカ出身で、電気自動車テスラに取り組むイーロン・マスクを描いた『イーロン・マスク 未来を創る男』(講談社、2015)や、リテールを根底から揺るがし続けるアマゾンの内幕もの『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』(日経BP、2014)もよく読まれている。

 これからの注目書には、Tech Titanと呼ばれる彼らが、自分たちの後に続くアントレプレナーに向けて最初からビジネス書として書かれたものもあり、刊行されたばかりのエリック・シュミット著『HOW GOOGLE WORKS 私たちの働き方とマネジメント』(日経新聞出版社)も、ビジネスマンとしては必読だろう。