①規模の経済と独占企業
~東電は正に「市場の失敗」例
「規模の経済と独占企業」ですが、これは電話会社や電力会社のような企業を考えてみればいいでしょう。電話会社は最初に電話線を引きますし、電力会社も最初に電線を引かなければいけません。
これは莫大な投資が必要ですが、いったんできてしまえば電話の利用者が2倍になろうと、供給する電力が2倍になろうとあまり追加コストはかかりません。
よって、最初に電話線や電線を作ってしまった会社が規模の経済を最大限に利用して市場を独占してしまうことが可能です。こうやって新規参入がほとんど不可能になると、利用者はどんなに高い料金でも既存の会社の言い値を払わざるをえません。これでは消費者である国民の利益が大きく損なわれます。規模の経済が大きく働く産業では独占企業が生まれてしまうために、自由市場の競争にすべて任せるわけにはいきません。
このような場合、独占を認めて、公益企業として政府が価格などを管理するという、半分国営のようにしてしまうのがひとつの方法です。日本の電力会社は地域独占が認められていて、半官半民の経営形態になっています。やはり競争がなく、コスト競争するインセンティブがないので世界的に電気料金が高いのが問題になっています。独占の弊害を防ぎ、かつ競争原理を導入する制度改革が待たれます。
また、会社が大きくなればなるほど有利になる「規模の経済」が働くような産業では、企業合併などで1社が市場を独占してしまうと消費者の利益が大きく損なわれてしまうので、何らかの規制を作って常に複数の会社を競争させるようにしないといけません。よって世界の先進国では例外なく独占を禁止する法律があります。
少し前に、アメリカでマイクロソフトが独占禁止法に抵触するかどうかというので、ずいぶんと話題になりました。アメリカの司法当局はマイクロソフトをOSのWindowsの会社と、ワードやエクセルなどのアプリケーションの会社に分割することを考えていたようです。
しかしある企業が独占状態かどうかの判断は多くの場合、そう簡単には割りきれません。そして時に政治が深く介在してしまうことになります。最近ではやはりグーグルの検索エンジンが独占状態かどうかが議論されています。
日本もNTTのような、独占に関しては微妙な元国営企業があり、ほんの少し規制が変わったり、独占禁止法の解釈によってものすごい金額の利害が発生してしまうので、さまざまな政治活動をさかんにしています。規制業種の企業が政治家や官僚ととても仲良くするのはこのためです。政府はこういう問題に関しては、一部の大企業ではなく、常に消費者の利益を考えてほしいものですね。