④情報の非対称性
~2001年のノーベル経済学賞のテーマ

 最後の「情報の非対称性」とはなんでしょうか?これはモノやサービスを売る側が、買う側に対して圧倒的に多くの情報を持っていることです。このように情報が不公平な状態を非対称といいます。アカロフやスティグリッツはこの分野でノーベル経済学賞を取りました。アカロフの有名な中古自動車の分析をここで簡単に説明しましょう。

 中古自動車の売り手はその自動車にずっと乗っていたわけなので、当然さまざまな不具合や事故歴を知っています。しかしなるべく高く売りたいのでそういった不利な情報はできるだけ隠そうとします。中古自動車の買い手はちょっと試しに乗ってみるぐらいで買うかどうか決めなければならず、なかなか本当の情報がわかりません。すると買い手は常に事故歴などが隠されているということを想定して、値段をつけなければいけないことになります。

 その結果、中古自動車の買い取り価格は常に安すぎることになり、まともな中古自動車を売ろうとしている人が不利益をこうむります。逆にいうと、その値段でもいいと思っている悪い情報を隠している売り手が、積極的に不良車を売りさばこうとするでしょう。このように悪貨が良貨を駆逐してしまうのです。

 2008年の世界同時金融危機でも、複雑な金融商品はそれを売る金融機関と、それを買う投資家の間に大きな情報の非対称性があったといわれています。

 また、金融機関の内部でも大きなリスクを取り扱う現場のトレーダーと、経営者の間にやはり大きな情報の非対称性があり、儲かったら巨額のボーナスをもらえるけれども、損したらせいぜい会社をクビになるだけのトレーダーが、経営者があまり理解できない巨大なリスクを積極的に取ったことが原因のひとつだともいわれています。