結論 政府の仕事は2つだけ!

 このように市場は必ずしも万能ではありませんが、逆にいえばこの4つ以外のすべてにおいて、自由な市場による競争というのが、国民全体をより豊かにするための最高のシステムだということです。

 そして、自由市場経済に対する政府の役割とは、これらの市場の失敗を正していくことで、市場に恣意的に介入することではありません。そういった不必要な政府の介入は、社会全体の資源配分をゆがませ、国民全体の利益に反するものになります。

 また、ここで上げたような市場が失敗するケースは、自由市場が必ずしも最高のパフォーマンスを出せないといっているだけであり、政府管理の方が必ずうまくいくとはいっていません。多くの場合、市場の失敗より、政府の失敗の方がひどいものです。政府が経済を統制できると考えた、旧ソ連のような共産圏がどうなったかを思い出せば、政府がいかに非効率かわかるでしょう。

 もうひとつの政府の役割はセーフティネットを税金で作ることです。市場で自由な競争を行なえば、当然そこには勝つ人と負ける人が出てきます。失業してしまったとしても、次の職が見つかるまでの間の必要最低限の生活費を給付したりするセーフティネットが必要です。競争に負けた人がそのまま社会に復帰できなければ、それは社会全体にも大きな損失です。競争から滑り落ちた人をいったんセーフティネットで保護して、また、次の競争に参加させてあげるのです。

 病気や怪我で働けなくなってしまった人や、障害を持って生まれてきた人たちをサポートするのも政府の仕事でしょう。また、お金持ちの家庭の子どもも、貧乏な家庭の子どもも、等しくチャンスを与えられる必要があります。そのために必要なことは、すべての子どもに十分な教育機会を与えることです。機会平等、結果不平等が資本主義社会にとってもっとも重要な道徳であり倫理です。

 社会全体から薄く広く徴収した税金で、このような社会のセーフティネットを作ったり、すべての子どもたちへよい教育の機会を与えるのです。セーフティネットは社会で負担する保険ですし、すべての子ども達に教育機会を与えるのは社会のための投資です。 

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