少子高齢化が進行し、日本市場が急速に縮小している今、グローバル化に対応できないビジネスパーソンは、生き残ることが難しい事態に陥っている。しかし、日本の中学・高校では、未だ「東大」を頂点とした国内大学への進学のみを目指す教育が行われており、グローバル化が進む世の中の動きとは大きなギャップがあるのが現実だ。

そうしたなか、小学生~高校生向けに「世界標準のコミュニケーション」教育と「未来のグローバルリーダー」養成を行うスクール・IGS(Institute for a Global Society)の福原正大社長は、「東大とハーバードの二兎を追う」教育こそが、これからの日本の中学・高校教育に求められるものだと主張する。なぜ、東大とハーバードの二兎を追うことが世界で通用する力を身につけることになるのか。また、あえて世界の頂点であるハーバードだけではなく、東大をも狙える人材育成に重点を置くのはなぜか。その理由に迫った。

日本はテクニック、記憶偏重に陥っている!
東大を頂点とする教育システムへの警鐘

石黒 福原さんは、IGSを開校する以前、バークレイズで取締役をなさっていたそうですね。資産運用の分野から教育へ転身し、スクールを開こうと思ったのはなぜですか。 

ふくはら・まさひろ/Institution for a Global Society株式会社(IGS)代表取締役社長。慶応義塾大学卒業後、1992年から2000年まで株式会社東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)、企業留学生として欧州経営大学院(INSEAD)にてMBA取得。2000年から2009年までバークレーズ・グローバル・インベスターズ株式会社取締役を歴任。2010年5月、グローバルリーダー育成スクールIGSを起業。
Photo by Toshiaki Usami

福原 私は、以前から東京大学を頂点とする教育システムこそ、日本教育の最も大きな問題だと考えていました。実際に進学高校で先生の多くが、いかにたくさんの生徒を東大に合格させるかを重要視し、さらにどう東大に受からせるかテクニックに走っています。そうした教育を打破する意味も込め、「世界標準のコミュニケーション」教育と「未来のグローバルリーダー」養成を行おうと、昨年8月にIGSを開校しました。最初は高校生が対象でしたが、親御さんからの要望もあり、現在では中学生・小学生向けのプログラムも開始しました。

石黒 私は経済産業省の委員をしています。委員会の主題は日本の産業の復興とかIT分野での国際競争力の強化です。日本の競争力を強化するために、各企業がどう行動していくか、いかに産業構造を変えるかということを議論するわけですが、委員会の結論は、やはり長期的には人材、すなわち教育を変えていくしかないというところに落ちるんですよね。しかし、今の学校教育の現場は記憶偏重でテクニックを駆使して受験に合格させるというもの。もはやそういう教育は全く必要ではないと思います。

福原 私も時間の無駄だと思います。とても大事な中学・高校時代にテクニックに走るのはあるべき姿ではありません。その頃の子どもは、思考訓練をしたり、よい経験ができる環境下で過ごすべきです。