人生のパートナーと分かち合う
「二人主義」という発想

藤原:そういう高学歴、美人、仕事ができると三つが揃った三高の女性に共通する、もうひとつの特徴は、父親が非常にしっかりしていることではないでしょうか。そういう女性の父親は、不思議とみんな立派なんですよね。地位が高いとか知的な職業といった意味ではなくて、人間としてしっかりしている父親が多い。そして、そういう女性は、基本的に父親が好きなんですよ。これでは、どんな男性が現れても、絶対に勝てない(笑)。

大塚:常に父親と比較されるということなんですね。

藤原:ファーザーコンプレックスというわけではないですが、やはり父親がしっかりしていて、母親がちゃんと子育てをした子は「いい子」として育ちますから、自然とどこかで父親のことをリスペクトしている。だから、どんな男性が現れようと、結局は父親のほうがお金も持っているし、いろんなところへ連れまわしてくれるし、父親との思い出のほうが圧倒的に濃密だから、勝てないです。

大塚:お父さんの影響力が絶大なんですね。

藤原:ところが、その父親が病気になったりして、父親との別れを意識すると、結婚を急に意識せざるを得なくなる。

30代の後悔しない結婚とは?<br />「結婚は共同経営」という発想<br />藤原和博×大塚寿 対談【後編】大塚寿さん

大塚:なるほど。それ、うちもそうです。うちの家内もバリバリのキャリアウーマンでしたけど、父親の末期がんが発覚して、家族を持とうと真剣に結婚を考えたそうですから。

藤原:だから、もし女性が、先の三つの条件のうち、二つでも一つでも揃ってしまっているなと思ったら、やはり父親というものをどう位置づけるかが重要になりますね。一旦、父親の影響力から逃れるということをしないと、なかなか他の男性を認められない。意地でもひとり暮らしをして不自由になってみるとか、日本を出て上海とかバンコクに行ってしまうとかね。そういうことでもしないと、男性と一緒になるのは難しいと痛感するべきなんですね。

 ところで、逆に結婚していない男性で、「結婚すればよかった」と後悔している人の場合はどうなんでしょうか?

大塚:何より、職場で出会いがないようですね。男ばかりの職場とか、あまり若い女性がいない職場とか。あとは、いまでいう草食系が多いんではないですかね。基本的に、あまり女性がほしいと思っていなかったり、幼児体験なのか学生時代の体験なのかわかりませんが、フラれたことの苦い経験から、自分は魅力のない人間だと自信をなくしている人も多いです。

 今の時代、肉食系で、自分からガツガツいく人は少ないかもしれませんね。恋愛や結婚がなぜか面倒臭く、趣味に生きてしまうタイプの人も多いのではないでしょうか。ナンパとか合コンとか、そういうのに関しては消極的で、おとなしい人ですね。

藤原:自分から働きかけるのが苦手な人ですね。

大塚:そうなんです。男性の場合は、特にそこが問題ですね。なんとなく後伸ばしにしているのか、億劫なのか、女性に慣れていないのかわかりませんが、女性は待っているのに……というケースはよくあるみたいです。ここを乗り越えないと、男性は必ず後で後悔するので、いまそういう境遇の人にはがんばってもらいたいですね。

藤原:なるほどね。では最後に『30代を後悔しない50のリスト』にもある「ひとりで生きることを選んでしまった」という後悔はどうなんでしょう? それはいけないこととして、とらえるべきなの?

大塚:いや、いい悪いではなく、もちろん、独り身でいるべきかどうかは、個人個人の価値観の問題です。ただ、少なくても、一人で生きたことを後悔した人が多くいらしゃるわけで、心の通じ合うパートナーを持つことが人生の充実度につながることを、私は諸先輩たちから教えてもらいました。

 ひとりで生きることを選んだのを、もしも死ぬときに後悔するんだったら、もはや変えられませからね。別に結婚という形式にとらわれなくても、パートナーと生きるほうが幸せなんじゃないでしょうか。「これ、おいしいね」っていう相手、必要ですよね。

藤原:それがまさに、僕が11月に出版する『坂の上の坂―55歳までにやっておきたい55のこと』(ポプラ社)という本で唱えている「二人主義」なんですね。今の時代、坂の上に雲はなく、まだ坂があるんですよ(笑)。明治期の人たちは平均寿命が四十代だったから、そこで死ねたんです。ところが、今は山を越えても、あと40年、50年あるという時代ですから、もう二個ぐらい坂を登らないと美しく死ねない。

 この本のなかで、僕は過去にヨーロッパで見てきたものを書いているんです。それは「二人主義」という人生哲学。ヨーロッパでは、別に妻じゃなくてもいいんだけど、パートナーとともに行動するでしょ。パーティーに出席するのも、食事をするのも、映画を観に行くのだって、感想を述べ合うパートナーの存在というのが大事なんです。男同士、ゲイのカップルも普通にいるから、別に結婚という枠組みにこだわる必要はないんですけど。

大塚:「二人主義」という発想は面白いですね。後悔しない人生を送っていくためにも、非常に参考になる考え方です。正解を追い求めるのではなく、二人で修正していきながら人生をより良いものにしていく意味でも、これから大切になりそうなコンセプトですね。

 今日は実りあるお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。(談)(2011年10月11日収録)

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ダイヤモンド社
四六判・248ページ

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特別対談の日程
●第1回:「藤原和博×大塚寿」(前編)
●第2回:「藤原和博×大塚寿」(後編)
●第3回:「川北義則×大塚寿」(前編)(11/2)
●第4回:「川北義則×大塚寿」(後編)(11/4)
●第5回:「桑野克己×大塚寿」(前編)(11/7)
●第6回:「桑野克己×大塚寿」(後編)(11/8)
●第7回:「渡辺佳恵×大塚寿」(前編)(11/10)
●第8回:「渡辺佳恵×大塚寿」(後編)(11/11)