前回、グローバル時代を日本人が生き抜くためには、「東大とハーバードの二兎を追う」教育が必要だという主張を紹介した。では、「二兎を追う」ため、具体的にはどのような教育を行えばよいだろうか。そこで今回は前回に引き続き、「世界標準のコミュニケーション教育」と「グローバルリーダーの育成」を目指し、小学生から高校生向けのスクールを展開するInstitute for a Global Society(IGS)の福原正大社長にお話を伺い、グローバル時代に即した教育プログラムの内容を明らかにする。

「ロック歌手プロデュース」や「サーカス業界再生」が課題!?
子どもを実社会とつなぐクリエイティブな授業

石黒 福原さんは前回のお話のなかで、グローバル人材には7つの力、すなわち、(1)セルフコンフィデンス、(2)基礎徹底力、(3)創造力、(4)問題設定力、(5)クリティカルシンキング、(6)コミュニケーション力、(7)実行力が必要だとおっしゃっていました。では、具体的にはどのような教育・授業を行えばよいのでしょうか。

IGS 福原正大社長
Photo by Toshiaki Usami

福原 前回もお話ししたように、日本の学校に通う子どもたちは、他の国の子どもたちと比べて高い基礎力を身につけています。つまり、7つの力のうち、(2)基礎徹底力については日本の学校教育によって身につけることが可能です。しかし、それ以外の力は日本の教育では身につけることが難しいので、私たちのスクールでは残りの6つの力を伸ばしていくことを中心にプログラムを組んでいます。

 まず1つの例として挙げられるのが、小学生にグリム童話など様々な童話を簡単な英語で読ませる授業です。もちろん、ただ読ませるだけではありません。読んだ後に、もしストーリーのある部分を違う展開に変えたらどうなるか、例えばもし魔法を使わなかったらどうなるかなどといった質問し、子どもたちの創造力を鍛え、英語で説明する力を養っています。また、展開の論理的帰結を考えさせることにより、クリティカルシンキング力も付けるようにします。

「リーダーとの対話」という授業では、子どもたちのロールモデルとなり得る世界で活躍されるリーダーにお越しいただき、対話によって多くのことを吸収し、自らのリーダーシップ像を内面に作り上げていきます。これまでロクシタンジャポンの鷹野志穂社長、ライフネット生命の岩瀬大輔副社長や世界的ジャズピアニストの椎名豊さんなど20名以上の方にお越しいただきました。また、前回も触れましたが、能楽師の方などにお越しいただき、日本文化を英語で説明できるようになるための授業も行っています。

 今年のサマースクールでは、構想力を鍛える授業を複数行いました。実際のプロデューサーの方にお越しいただき、「あるメキシコの若手ロックグループをデビューさせるためにはどうすればよいか」という課題を出してもらい、講義を受けながらプロデュース策を考えさせました。その他には、サーカス業界に新規参入するとしたらどうするかという課題を出し、なぜ客足が遠のいたかの背景を探るためにサーカス業界分析をさせ、ブルーオーシャン戦略などを教えて新規参入のアイデアをグループで議論させました。子どもたちからは、大人顔負けの面白いアイデアがたくさん出てきて、非常に面白いものになったと思います。