チャンスを受け取ることの「代償」とは?

「チャンスが与えられる」という言葉から、「非常にラッキーなこと」「夢のようにうれしいこと」「何の不安もなく手放しで喜べること」を思い浮かべる人もいるでしょう。

 しかし、実際に仕事の場面で与えられるチャンスとは、100%の幸運やワクワク感ではありません。

 むしろ、本物のチャンスとは、成功機会と不安や恐怖がセットになっているものです。場合によっては、成功できる見込みが30%程度しかなく、反対に不安や恐怖が70%以上もあって、ワクワクするどころか緊張に身が震えることもあるものです。

 あるいは、現在の自分の実力が仮に100だとすると、150から200くらいの力を必要とするもの、それがチャンスの正体です。

 チャンスを受け取った人は、そのチャンスを着実に自分のものにして、期待される成果を出していくためには、それに合わせて自分の力量を短期間のうちに高める集中的な努力が必要となります。あるいは、いままで避けてきた苦手なものに直面することになります。

 これが、いわゆる「試練」です。

 チャンスは、試練とともにやってきます。チャンスの女神は、それを受け取った人に課題を突きつけて、その人を試すのです。

「あなたは、本気でこのチャンスを自分のものにする覚悟がありますか?あなたは、このチャンスを本当に活かすだけの力がありますか?その証拠を見せてごらんなさい」

 ですから、新しいプロジェクトなどが始まると、思わぬトラブルが発生したり、予想外の条件や難しい課題が突きつけられたりします。

 たとえば、予算がもらえない、お役所から許可が出ない、部下や家族が急病になる、顧客が気難しい人でコミュニケーションに困る、設備や機械が壊れる、社内で反対勢力が抗議してくる…などなど。

 すると、気の弱い人や自信のない人、あるいは実力が足りない人は、これらの試練を目の当たりにすると、すぐにあきらめてしまいます。

「あー、これじゃあもう無理ですね。やめましょう」

「私に対応できるのは、この範囲だけです。ここから先はできません」