オフィスへ戻る途中、私はボスから英語のミニレッスンを受けました。そして、

「I can manage.」という言い方には「嫌だけど、仕方がないから、
やってやる」
というニュアンスがこめられている。
「喜んでさせていただきます」と言いたいのであれば、

「I am more than happy to do it.」

  あるいは、

「It would be my pleasure to do it.」

  などと言わないと、通じないことを知りました。

  ボスに間違いを指摘してもらえたからいいものの、もしも彼がいなかったら、私は大切なビジネスの相手の信頼を失っていたかもしれません。 

「センターピンを外さない」英語を身につける

  正しい英語とは、「そのシチュエーションにおいて、最も思いを伝えられる表現」、つまりボーリングにたとえると、「センターピンを外さない表現」を使うことです。
  そのセンターピンを外すと、どうなるか。
  私のように「地雷を踏む」ことになります(笑)。

「ザ・キタノ・ニューヨーク」に勤めていた2年間と、その後のヒルトン勤務の5年間で、私は「あらかた地雷は踏んだ」と思っていましたが、甘い目算でした。
  地雷はその後も、まだまだふんだんに隠されていました。

  アメリカに20年間住んだあとでも、どこにこの地雷が隠されているのかわからず、私はたびたび失礼な物言いで相手を怒らせたり、悲しませたり、不愉快にさせたと思います。
  気がつかなかっただけで、知らないうちにビジネスを失ったり、友人を傷つけたりしていたかもしれません。

  職場でも、街中のBAR でも、私はたくさん地雷を踏んで(間違った英語を使い)、そのたびに「こういう表現は、人を不快にする」「こういう表現は人を怒らせる」、逆に「こういう表現は相手の注目を浴びる」ということを皮膚感覚として学びました。

「I can manage.」は、「can」と「manage」という英単語が並んでいます。理屈では「マネージできる」となるはずなのに、どうして「仕方がないから……」というネガティブな意味を含むのか、いくら頭で考えてもわかりません。

  私は、ボスとお客様の表情を見て「地雷を踏んだ」ことを知り、叱られて、痛い思いをして、そして教えられながら、「I can manage.」が対話で使われるときの意味を知ったのです。