資源のみに傾注しない“安定”した資産構成を築く住友商事。新中期経営計画で1兆1500億円の巨額の資産入れ替えに踏み切る。より効率的に稼ぐ体制は築けるか。
今年5月、住友商事は2012年度を最終年度とする、2年間の新中期経営計画を発表した。
掲げられているのは、意欲的な計画だ。新規投融資の5800億円は、じつに同社の株主資本の32%に相当する。住友商事は、近年ほぼ毎年約3000億円の投資を進めており、今後もその積極姿勢を貫く方針だ。
注目すべきは、積極投資を進めながらも「総資産の規模は11年3月期と同水準に保つ」と宣言している点だ。
5800億円の新規投融資に伴い、連結で1兆1500億円の資産が増加するが、同時にそのぶんの資産を売却・削減するのだ。結果として、総資産7兆2300億円の16%が、2年間の投資と売却で入れ替わる勘定になる。
資産の規模を維持したまま、同社の収益性指標である「リスク・リターン」(=当期純利益÷リスクアセット)を、現在の12.7%から15%以上へ引き上げ、「経営資源の効率化を加速させる」(濱田豊作・取締役専務執行役員CFO)のが狙いだ。
「成功モデルとして収益を獲得しているビジネスも、将来の成長性を軸に、常に見直していかなければいけない」──。
今回の中計発表に伴い、加藤進社長は資産の入れ替えの大号令を発した。
図①を見ていただきたい。
2000年代中頃から、住友商事の資産の伸びはどの商社よりも大きくなっている。固定資産は10年で2倍近くになり、連結子会社の数は576社と現在、大手商社のなかで最も多い。
背景には、住友商事が資源に頼らない“バランス経営”を取っていることがある。
同業他社が、エネルギーなどの資源分野に積極的に投資し利益を上げる一方で、住友商事の資源分野からの収益の割合は、ほかの商社と比べて小さい(図②)。
資産構成比を見れば一目瞭然だ(図③)。三菱商事や三井物産が資産の約4割を資源に充てているのに対し住友商事の資源の割合は約2割。輸送機・建機も約2割であり、過度な資源傾注は見られない。
資源分野の投資案件では、一般に海外企業とのパートナーシップ強化を核とし、出資比率が過半に達しない「マイナー出資戦略」が取られる。これに対し、住友商事の事業会社への出資は過半を握る案件も多かった。
資源へのマイナー出資では、バランスシートが大きくふくらまずにリターンが得られる。
だが、住友商事の出資の多くは、投資先の資産が連結の対象となり、バランスシートの総資産がふくらみがちになる。