原発の問題は大都市住民にとって、
他人事じゃなく自分たちの問題
山本:今井さんは、「みんなで決めよう『原発』国民投票」っていう市民グループの事務局長をやってますよね。ずっと国民投票をやろうって言ってたのに、ここにきて東京と大阪で住民投票をやろうと動き始めたのはなぜなんですか?
今井: 原発の問題は大都市住民にとって、他人事じゃなく自分たちの問題だからです。例えば福島第一原発の問題は、福島の人たちだけではなく首都圏の人たちの問題でもある。そのことをわかってもらう機会にしたいと考えたのが一番の動機です。
この国の有権者の99%以上は原発の立地地域ではなく消費地の住民です。立地地域に住む人が占める割合は1%にも満たない。にもかかわらず、これまでは、住民投票で決着をつけた巻町(新潟県)、海山町(三重県)、刈羽村(新潟県)以外はすべて、国とその立地地域の首長や議員の意思だけで原発設置やプルサーマル導入が決められてきた。それでいいのかという疑問があります。
山本:どこもかも、電力会社からいろんな名目で莫大なお金が集中的に投下されてね。玄海も上関もみんな同じパターンですよ。そのパターンで「民主的に」54基の原発が地方に造られていった。
今井:そうです。で、そのパターンで進めてきて、大都市の人間には建設の是非について、直接にも間接にも一切承認をとっていません。でも、例えばもし刈羽村で原発事故が起これば新潟市も大きな被害を受けるし、福井で起きれば琵琶湖の水が飲めなくなり大阪や京都、兵庫、滋賀も甚大な影響を受ける。それゆえ、都市住民にも建設・稼働の是非について物を言う権利があるはずです。そして、それは同時に責任をもつということでもある。福島第一原発の事故について、首都圏に住む人の多くは、東電や原発立地先に「迷惑をかけられた」と思ってはいても、福島の人々に原発を押しつけて「迷惑をかけた」とは思っていません。でも、電力の大量消費者である自分たちが原発というものを黙認して事故が起きた以上、「私は関係ありません」とは言えない。
東京都は東電株の約2.7%、
大阪市は関西電力株の約8.9%を所有する、大株主
山本:そこなんですよね。「脱原発」を理解して賛成してもらう前の段階で、まず「原発」は自分たちの問題なんだということを都会に住んでたり働いてる大勢の人にきちんとわかってもらう必要がある。そこを跳び越して運動を進めても拡がりに限界が出てくるんですよね。それは痛感してます。
今井:都市に住む私たちが[決定権者=責任者]であるべきだという根拠は、我々が東電や関電の消費者・ユーザーだということ。しかも、東京、大阪の住民の大半は基本的に東電、関電しか使えないのだから、口出しする権利がある。 それから、大株主が株式会社に対して口出しするのは資本主義の常識です。東京都は東電株の約2.7%、大阪市は関西電力株の約8.9%を所有する、それぞれ5位、1位の大株主。それなのに、都も市も主権者である私たちの意を酌んだ上で、きちんと口出ししないというのはまったくおかしな話です。
そういうことで「原発」都民投票、「原発」市民投票をという動きをとっているのですが、何をするかというと、都議会と大阪市議会に対して、都民投票、市民投票にかけるための条例の制定を求める直接請求を行うことになります。そして、私たち市民グループが作成している条例案では、結果が「原発」賛成多数であれ反対多数であれ、東京都議会と都知事、もしくは大阪市長と市議会は、投票結果を尊重し、東京(関西)電力、国及び関係機関と協議して、都(市)民の意思が反映されるよう努めなければならない、と定めています。で、太郎さんは都民投票の請求代表者の一人になってくださいました。