豊かだから向き合えた人生の本質
貧しさで身に付けたチャレンジ精神

 就職活動中の貧しい暮らしと、マッキンゼー時代のニューヨークでの裕福な暮らし。両方を味わったことは、私にとって貴重な経験でした。

 マッキンゼーにいた頃は、お金のことを考えなくてよいぶん、人生における本質的な問題に集中することができました。収入面の制約条件が外れたことで、「自分が本当にやるべきことはなんだろう」「人生にもっと大事なことはなんだろう」と考えられるようになったのです。

 一方、貧しい暮らしを経験したことで「お金がなくても、なんとかやっていける」という感覚を持つこともできました。日本でスタートアップに挑戦すると収入が極端に減るケースが多いのですが、それでも起業に踏み切れたのは当時の経験があったおかげです。企業経営においては、より本質的なお金の使い道は何かをつねにシビアに考えています。

 社名にもつけている「Wealth」は現代の辞書には「豊かさ」と出てきますが、本質的には「モノが無尽蔵にある状態」を指します。無尽蔵は大げさだとしても、衣食足りて初めて人間の本質的な問いに向き合えるのであり、それこそが“豊かさ”なのではないか。多くの人に豊かさを提供できるサービスは何か、というのがウェルスナビ起ち上げのきっかけであり、私個人もいまだに豊かさとは何かを追求しつづけています。