エコシステムの代わりとなる
セーフティーネット

The Familyのディレクターのエリカ・バティスタ氏 Photo by T.K.

 ディレクターであるエリカ・バティスタ氏は、「フランスにはグーグルやアマゾン、フェイスブックのような大きなIT企業がない。そのため、シリコンバレーのような環境はまだできあがっていない」と話す。

 米シリコンバレーであれば、起業が起業を呼ぶ「エコシステム」があるので失敗してもあまり心配はない。「失業の翌日に職が見つかる人も少なくない」(シリコンバレーの経営者)からだ。なにせ、スタートアップが次々と生まれており、恒常的な人手不足に陥っているため、失敗しても、むしろその経験が重宝されてすぐに声が掛かる。

 だが、失業率が10%を超えるフランスでは、米シリコンバレーのように次の仕事がすぐに見つかるわけではない。日本でも失敗すると「落第者の扱いを受ける」(スタートアップ経営者)が、フランスでも同じようなものだという。そのためファミリーは、「共助のモデル」を築いたというわけだ。

 では、なぜVC(ベンチャーキャピタル)やアクセラレーター(少額出資とプログラムの提供を通じて、スタートアップを急成長させる存在)ではないのか。バティスタ氏は「究極的には、それでは起業家サイドに立てない」と指摘する。

 確かに、VCやアクセラレーターは、起業家を支援する存在だ。だが、それは企業が順調に成長することが前提だ。上手くいかなくなければ、投資家は出資の引き上げや株式の売却、創業者の交代を迫る。投資家の目的はリターンであるのだ。

 そのとき起業家は、投資家と敵対関係となる。ファミリーの創業者自身がフランスでも有数のアクセラレーターだったゆえに、投資家による支援の限界に気づいたのである。

邸宅のようなコワーキングスペースで多くの若者が働いている Photo by T.K.

 その点、ファミリーはセーフティーネットを設けるだけではない。当然、起業の「いろは」を学べるプログラムを用意している。入りたての起業家を束ね、本物の城を借りてキャンプを行い、メンバー同士の絆を深めることもあるという。

 また、ファミリーの背後には、世界のエンジェル投資家やVCなど200以上に上る、いわゆる「ゴッドファーザー」の存在がある。マッチングイベントを定期的に行い、スタートアップとゴッドファーザーとの関係を円滑化して、資金調達を容易にしているのだ。

 フリーランスの派遣サービスを展開するSide.co(サイド)の共同創業者、ミシェルスキ・ヒューゴCTOは「会社を作ると、契約や支払いなどプロダクト開発以外にも大変なことが多い。ファミリーではそのノウハウを学んだ。ゴッドファーザーとのつながりができ、イギリスやドイツへの展開にもつながった。もしファミリーがなかったなら、今のサイドはなかった」と話す。

 とはいえ、投資家であればリターンが見込める。そうではないファミリーの場合、どのように運営しているのだろうか。