音から入れば、短期間で一気に上達する

子どもの場合とはアプローチが大きく異なりますが、大人の語学学習においても「音」が重要であることは変わりません。
みなさんが中学1年生だったころには、まずアルファベットの書き取りやスペリング練習からはじめたのではないでしょうか。しかし、中高6年間をかけても、ほとんどの人がまったく上達せず、社会人になったころには何も覚えていない日本の英語教育のことは、いったん忘れてください。語学はまず「音から」入る――これが基本です

僕がいたイェール大学では、50ヵ国語を超える語学が履修可能でしたが、そこでも発音重視の指導が徹底されていました。
MBA(経営学修士号)取得のためにイェールに来ていたある日本人の知人は、帰国時のフライトで「あっ!」と驚いたそうです。大学で中国語を1年履修しただけなのに、機内チャンネルで観た中国映画の7割くらいが理解できてしまったからです。

僕も大学院生だったころ、イェールの発音矯正プログラムに半年間ほど参加したことがあります。
何より感動したのは、講師を担当してくれたのが、音声学(Phonetics)という言語学の一分野で博士号を取得した専門家だったことです。発音矯正といっても、聞こえた音をただ真似するだけの練習ではありません。音声学の知見に基づきながら、人間の発声のメカニズムに即した科学的なアドバイスをしてもらえます。

「そうか、ジュンは日本語が母語なんだね。そのせいだと思うけど、Rの発音をするときに舌の位置が低くなるクセがある。もう少し舌を上にずらすように意識してみて」

こんなふうにスポーツのフォーム矯正のような指導をしてもらえます。おかげで発音が格段に改善したばかりか、英語音声の聞き取り能力も向上しました。

こうした僕自身の経験もあって、J PREPでは発音指導を徹底しています。
カタカナ読みのクセがついてしまう前の子どもであれば、そこまで手の込んだ指導をしなくても、正しい発音は自然と身につけることができます

もう少し大きい子になると、母語である日本語との違いをロジカルに説明してあげたほうが、習得がスムーズになることもあります。「この音を発声するときには、口のなかで何が起きているのか」を、子どもたちが具体的に理解できるよう、歯医者さんに置いてあるデンタルモデルを使って説明するなど、さまざまな工夫を授業に取り入れています。