いま、自転車が大ブームだが、それに伴って自転車事故が急増。社会問題にまで発展するなか、注目されているのが「自転車保険」だ。
自転車の場合、対自動車との事故では被害者になることが多いが、対歩行者では逆に加害者になる確率が高い。近年、自転車対歩行者の事故は増加する一方。なかには歩行者に重い障害を負わせてしまい、数千万円という高額の損害賠償を請求されるケースもある。
こうした自転車事故のリスクには、どのような保険で備えればいいのだろうか。
最も大きなリスク「賠償」
への備えはどうするか?
損害保険に詳しい、CFPの平野敦之さんは、まずはどこまで補償をつけるのか、自動車保険と同じ要領で、3つのリスクに分けて考えるべきとアドバイスする。
「一つは、自分が自転車に乗っていて他人にケガをさせたり、モノを壊したりしたときに発生する賠償への備え。自動車でいうと、対人・対物賠償保険です。もう一つは、自分がケガをしたときの傷害への備え、これは自動車の搭乗者傷害保険です。最後は、自転車の事故による修理代などへの備えです。自動車の車両保険にあたりますが、現状、これを保険でカバーするのはなかなか難しいようです」
この中でとくに考えておきたいのは、「賠償」と「傷害」への備えだ。
まず、賠償については、自転車事故やマンションの漏水など、日常生活の賠償事故に対応する「個人賠償責任保険」(個人賠償責任補償など保険会社によって商品名が異なる)がある。
ただし、個人賠償責任保険は原則単体では販売していないので、自動車保険、火災保険などの特約か、クレジットカードで付帯できるものなどで利用するのが一般的な形となる。つまり、自動車保険や火災保険にすでに入っていれば、その特約でカバーできるわけだ。
案外見逃しがちなのは、賃貸物件に住んでいる人。賃貸物件を借りたときに加入が求められる火災保険は、個人賠償責任保険をつけているケースが多いという。まずは、自分が加入している自動車保険や火災保険の中身を調べてみよう。
また、個人賠償責任保険は、できれば「示談交渉サービス付き」がいいという。もし事故が起きた場合、第三者の専門家に間に入ってもらったほうがスムーズに手続きが進むし、安心感も大きいからだ。
気になる保険料はどうだろう。
「それほど高くありません。たとえば火災保険なら、賠償限度額1000万円で月60~70円程度。賠償限度額を1億円にしても保険料が10倍になるわけではなく、月100円程度です。このくらいの違いなら、限度額はできるだけ多いほうがいいでしょう」(平野さん)
自分のケガにも備えたいなら
「傷害保険」に
次に、自分のケガへの補償も必要というのであれば、突発的な事故などによる傷害を保障する「普通傷害保険」で備えられる。
「傷害保険は、生命保険のように年齢によって保険料が変わることはなく、職業によって2段階の区分があります。例えば普通傷害保険で事務や営業職などの場合、死亡500万円、入院5000円・通院3000円、個人賠償1億円の補償で、月1800円程度です。交通事故に限定するなら、『交通事故傷害保険』のほうが補償対象の範囲が狭い分、保険料も安くなります(上記の例で保険料は月800円弱)」
また、子どもも加入するのであれば、1つの契約で自動的に家族全員が補償の対象者となる「家族傷害保険」に入るのもいいだろう。
保険料は安いに越したことはないが、通院保障がナシ、あるいはわずかというケースも多いので注意したほうがよさそうだ。
「傷害保険は、通院保障のコストが一番高くなっています。ですから、通院まで範囲を広げると、コストがかさみ、保険料も高くなるわけです」
通院ですむくらいのケガなら、補償は必要ないと考えるならいいが、一番可能性が高い通院の補償が手薄でいいのかどうか、よく検討する必要がある。