それは、ちょうどいい!

 以前、私は即興演劇のノウハウを企業研修に応用したワークショップ(インプロ・ジャパン主催)に参加したことがあります。そこで体験した中に「チャンスゲーム」というとてもユニークなワークがありました。

 これは、4、5名でグループになり、一人が社長、残りが社員役をやります。そして、社員が、とんでもないトラブルを社長にもちかけます。「社長、大変です! オフィスが停電になりました。どうしましょう」すると社長は「それは、ちょうどいい! よし、じゃあ、みんなでキャンドルパーティをしよう」というように、そのトラブルを逆にチャンスに変える、奇抜なアイデアを切り返す、というものです。

 それが現実的かどうかは別として、普段は問題としか思えない状況を、いかにプラスに変えていくかというこのワークは、多くの気づきがありました。つまり、「問題⇒解決すべき事柄」ではなく「問題⇒何かを変えるきっかけ、チャンス」という枠組みを、まずは頭に叩き込むことが大事なのです。

 ところが、実際問題として、普通の人にとっては、これって意外と難しいようです。研修などで似たようなワークをすると、答えに詰まっている人がたくさんいます。つまり、ふだんいかに、問題⇒何かを変えるきっかけ、チャンスだというふうに、頭を働かせていないのですね。

 逆転の発想は、日々の訓練で身につけることができます。ビジネスの本番でいきなり、周囲をアッと言わせるような逆転の発想を期待してもそれは無理。まずは、日々の小さいことから練習していきましょう。

 たとえば、待ち合わせで急に相手にドタキャンされたとします。普通なら、頭にきて、「なんで、もっと早く言ってくれないんだ。おかげで、こっちの予定が丸つぶれだ」「俺のことを軽く見ているんじゃないのか」とイライラするでしょうが、ここで逆転の発想を活用し「これは、ちょうどいい。時間が空いたので、本屋に行って前から見たいと思っていた本をチェックしよう」と思えばいいのです。そして、もしそこでお気に入りの本にであったり、美人の店員さんを発見したりすれば、逆にドタキャンした相手に感謝できるかもしれませんね。

 このように逆転の発想をするには、次の3ステップを覚えておきましょう。

 1 まず、起きていることを客観的に見る
 2 「それは、ちょうどいい」の一言で、チャンスのメガネにかけかえる
 3 そして、ちょうどよくするための「プラスの視点」を探す