軟弱地盤、木造建物密集、狭い道路、公園不足、そして用途混在。これらの課題が重なり合って、首都直下地震の発生時に想定される全壊建物数は1万3000余棟(区内の建物の13%)、焼失建物数は4万2000余棟(同42%)にのぼる。倒壊建物の数は全壊だけだ。半壊を加えると被害はもっと大きくなる。詳細は未公表ながら、23区全体の建物倒壊想定数は、全壊12万5000棟に対し半壊32万4000棟というから、推して知るべしだろう。

 停電45%、通信不通38%、ガス停止72%、断水74%。ライフラインはマヒ状態に陥り、区民の7割近くが避難生活を強いられる。まずは命を守ること。それだけが課題となる。

環七と荒川に挟まれた一帯の
「細街路」で消火活動が立ち往生

 東京都が公表する建物倒壊危険度4以上のエリアは、区の南西部を中心に24%に及ぶ。これに対して、火災危険度4以上のエリアは7%。特に多い訳ではない。東京消防庁のシミュレーションでも、出火危険度はそこそこ高いものの、延焼危険度は23区の平均以下に収まっている。にもかかわらず、なぜこれほどまでに火災の被害が拡大するのだろうか。

 葛飾区内で震災時に火災被害が集中すると想定されているのは、環七と荒川に挟まれた一帯だ。そこは、細街路の閉塞が集中して発生すると予想されるエリアでもある。「細街路閉塞」とは、建物の倒れ込みや電柱の倒壊、路上に放置される自動車などによって、道路が通行できなくなること。こうなると、消火活動は行く手を阻まれ、立ち往生に陥ってしまう。「細街路」といっても、幅員13m未満の道路では「閉塞」が生じる恐れがある。

 区がこのエリアでの防災まちづくりを、重点課題としていることはいうまでもない。だがこれと併せて、危機管理全体のレベルアップも大きな力が注がれている。2009年6月に策定した『葛飾区震災復興マニュアル(都市・住宅編)』は、その集大成の1つだ。復興は、絵に描いた通りには進まない。このマニュアルは、区民が参加する復興模擬訓練を行い、その成果を反映させながら、区と区民が協働で作りあげた「実践の指針」である。