健康な人でも発症する
ロングフライト症候群

 Aさん、Bさんに発生したのは、典型的な肺血栓性塞栓症です。「エコノミークラス症候群」という表現でしばしば取り上げられます。脱水など血液が固まり易い状態にあってしばらく動かない状態が続いた時に、足にできた血栓が飛んで、肺に血液を送る肺動脈が塞がれてしまう病気です。

 エコノミークラスに搭乗したときにのみ生じる訳ではないので、最近では、「ロングフライト症候群」「旅行者血栓症」などの表現が適切だと言われています。これは、元来健康で基礎疾患を持たない方でも起こし得る血栓症で、命に関わることがあります。脱水、長時間の無動がきっかけになって、足の静脈に血栓が発症することが原因です。

●生活習慣病の終末像
 Cさんは、40代男性。学生時代は野球やサッカーなど様々なスポーツに興じていましたが、大学を卒業してからはめっきり運動する機会が減り、夕食は外食中心で就寝時刻も遅く、不規則、不健康な生活を送っていました。ビール腹で、体の筋肉も落ちてしまい若い頃に比べて体型が大きく変わってしまいました。
 職場の健診で、高血圧、境界型の糖尿病、そして脂質異常症と診断され、それぞれの対応薬を医療機関から処方されていました。生活改善が必要なことはわかっていても薬に頼るのみで、食事運動療法にはなかなか取り組めない毎日でした。
 数日前から風邪を引き体調を崩していたCさんは、その日の仕事を何とか終えましたが、症状が芳しくないので、その夜予定されていた会食を断って、翌日は仕事を休んで自宅休養することにしました。翌朝、突然の胸の痛みで目を覚ましました。
 胸の痛みが軽くなった気がしたので立ってトイレに向かおうとすると再び痛み出し、その後、痛みがどんどん強くなって呼吸も苦しくなり、冷や汗が出てきました。胸の痛みが左の首元まで放散して、おさまる気配がないばかりか意識が遠のいてきたので、家人に頼んで救急車を要請しました。
 救急車内でCさんは痙攣を起こし意識が全くなくなりました。間もなく病院に到着したところ心室細動という致死的不整脈が生じていることがわかり、電気的除細動器で何とか意識は回復しました。急性心筋梗塞の診断で緊急治療が開始され、カテーテルによる冠動脈形成術によりCさんは一命を取り留めました。