香港フェニックステレビでコメンテーターを務め、中国国内でのメディア露出も数多いことから「中国でもっとも有名な日本人」と言われる加藤嘉一氏は、北京大学朝鮮半島研究センターで北朝鮮情勢を研究する専門家でもある。同氏は今回の事態をどう分析しているのか。各国が懸念する混乱やクーデターが起こる可能性はあるのか。日本はこの変化にどう対処すべきか。中国にいるからこそ見えてくる、今後の北朝鮮情勢について展望を聞いた。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 片田江康男)

あまりにも早すぎた
金正日総書記の死

――金正日総書記が亡くなり、三男の金正恩氏が次期指導者となる。現状をどうみているか。

最悪の事態は「第二次朝鮮戦争」<br />25日の野田首相訪中に世界の注目が集まる<br />――加藤嘉一・北京大学朝鮮半島研究センター研究員インタビュー加藤嘉一・北京大学朝鮮半島研究センター研究員

 あまりにも金正日総書記が亡くなるのが早かった。少なくとも2015年までは金正日総書記と金正恩氏が一緒になって北朝鮮を統治するという期間が必要だった。金正日総書記は、金日成体制の時に権力継承に20年間もの時間をかけ、国内の権力基盤を盤石にしてから、総書記に就任した。そして、実際に統治したのは17年間。実際の統治よりも準備期間のほうが長かったのだ。しかし、金正恩氏は準備期間がわずか1年間だ。

 金正日総書記の健康問題がクローズアップされ、後継者として昨年9月に金正恩氏がお披露目されてから、われわれのような中国における北朝鮮研究者の間では「金正日総書記がこの先どのくらい生きていけるのか」ということが一番の関心事だった。金正日総書記あっての金正恩氏だからだ。平和的に徐々に改革・解放へ向かって進んでいくためには、できるだけ金正日総書記が生きているうちに、金正恩氏に権力を委譲することが大切だったのだ。