値上げできないデフレ時代の終わり
宅配便は再値上げをすべき

 値上げをしても荷物量が減らなかったのだとすれば、それは宅配便業界にとっては素晴らしいことだ。

 デフレの時代には、各社が供給力に余裕があったから、「値上げをすればライバルに客を奪われてしまう」「それより値下げをしてライバルから客を奪おう」というのが各社の基本的な考え方だったのだが、そうした時代が終わりを告げたのである。

 自社も値上げしなければ、ライバルから客が流れ込んできて処理しきれなくなってしまうので値上げせざるを得ないなんて、デフレ時代の企業経営者が聞いたら泣いて喜びたくなるような状況だ。「他社より値上げ幅を大きくしないと仕事が減らせない」などという夢のような値上げ競争の話は、筆者は聞いたことがない。

 ここで重要なことは、「自社だけが値上げをした場合の影響」と「みんなで値上げをした場合の影響」をしっかり区別して考えることだ。

 自社だけが値上げをした場合、業界全体としての荷物量は減らないので、顧客はライバルに流れるだけ。しかし、みんなで値上げをした場合には、「そんなに高いのなら、宅配便は使わない」という人が出てきて、業界全体としての荷物量は減る。問題は、「値上げ率」と「荷物量の減少率」の関係なのだ。

 例えば、料金が1000円の荷物があって、800円がコスト、200円が利益だとしよう。1000円を1100円に値上げして、荷物が10個から9個に減れば、売り上げは1万円から9900円に下がる。だが、1個あたりの利益は200円から300円に増えるから、トータルの利益は2000円から2700円に増える計算だ。

 ヤマト運輸の場合、10%以上値上げしても荷物の減り率は5%程度で、しかも3月には日本郵便に流れた客が戻ってくるだろうから、値上げにより利益は大幅に増えているはず。ライバルも同様だろう。